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ジャズ喫茶巡礼「田舎でジャズ喫茶」新連載がスタート

ON LAVA

ON LAVA
「ON LAVA」の外観と店内写真 Photo by Katsumasa Kusunose

【プロローグ 新連載にあたり】

文:楠瀬克昌

「ジャズ喫茶をやりたい」という人がいま全国的に増えている。その多くは,自分がこれまで集めてきたオーディオ機材やレコードを「ジャズ喫茶」という形で披露したいという長年のジャズやオーディオのマニアだが,「ジャズ喫茶」とは名乗らなくてもジャズのレコードを本格的な機材でかける喫茶店やバーを始める人たちも増えている。

いま全国で営業している「ジャズ喫茶,ジャズ・バー」はおおよそ600軒になるが,建物の老朽化や店主の高齢化により閉業する店が増える一方で,新規開業や事業継承した店も年々増えていて,総数としてはこの5年間のジャズ喫茶の総数は微減であり,1990年代から始まった「ジャズ喫茶は絶滅危惧種」と言われていた長期低落傾向にやや歯止めがかかっているようだ(ただし,これからの数年は店主の高齢化による閉業が加速化するだろう)。こうした「ジャズ喫茶復活?」の理由は,最近の世界的なレコード・ブームやヴィンテージ・オーディオを主役とする「いい音への憧れ」などの要素と戦前から続く我が国特有の根強い喫茶店人気が結びついたものなのだろう。

 こうしたブームを背景に「田舎でジャズ喫茶をやる」ことに着目したい。狭くて天井が低く,防音も万全でない物件がほとんどという大都市でいい音を鳴らすための環境を整えることはよほど潤沢な資金でもない限り至難のことだが,それに比べて「田舎」は物件がまだ安く,また自身の地所をすでに所有している人も少なくない。ジャズ喫茶を開業するために必要な諸条件をクリアしやすいのが「田舎」なのである。

ただし,「田舎」のいちばんの難点は「お客さんがいない」ということだ。この不利な条件をくつがえすためには「地元でコツコツとファンを増やしていく」「遠方から来てもらえるだけの付加価値を創造する」などが考えられるが,また,「営業日を限定して他の仕事との兼業で収入を確保する」というかたちもある。実際,最近は「兼業でジャズ喫茶」というパターンがかなり多い。

連載「田舎でジャズ喫茶」では,地方でジャズ喫茶をやることのメリット,デメリットをふまえながら,これから日本のどこかでジャズ喫茶をやりたいという人たちの参考になるとともに,ジャズやオーディオのファン,ジャズ喫茶巡礼者も楽しめる情報を発信していきたい。

第1回は ON LAVA (山梨県富士吉田市)を掲載。

ON LAVA
〒403-0014
山梨県富士吉田市竜ヶ丘1-3-9
営業時間 : (土)15:00〜22:00
(日・祝)12:00〜18:00
TEL 090-5395-1786
https://jazz-house-on-lava.weebly.com/