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CAITY GYORGY Hello! How Are You? ケイティ・ジョージ ヴォーカル・ファンを熱狂させる新世代Jazz Muse


Photo by Tieran Green

JUNO賞3冠という快挙を成し遂げ,世界のジャズ・シーンで確固たる存在感を放つカナダの若きヴォーカリスト,ケイティ・ジョージ。卓越した作曲センス,アニタ・オデイを思わせる温かい歌声,洗練と遊び心を兼ね備えた音世界は,聴く者を新たな“アメリカン・ソングブック”の世界へ誘う。
“ハロー!ハウ・アー・ユー?”―今,26歳の彼女が放つ煌めく問いかけが,ジャズの未来を照らし出す。

インタビュー/文:落合真理

軽やかに,自由に――オリジナルとスタンダードが交差するケイティ・ジョージの歌世界

軽やかに舞うスキャットと,聴く者の心を掴んで離さない煌めくメロディー。JUNO賞(ジュノー賞:カナダの最も権威がある音楽賞)3冠の快挙を成し遂げたカナダ発の新星ジャズ・ヴォーカリスト,ケイティ・ジョージ待望の最新作『ハロー・ケイティ!』が新レーベルspoonから登場。高い完成度を誇るオリジナル曲の数々,ジャズ通をも唸らす洒脱なアレンジ,アニタ・オデイに通ずる力強い歌唱力で,昨年末の来日公演を成功させた彼女。新時代のジャズ・ヒロイン,ケイティ・ジョージが,さらに深化した歌声で私たちに問いかける——“ハロー!ハウ・アー・ユー?”
愛らしい笑顔の奥に,新たな“アメリカン・ソングブック”への尽きぬ情熱を秘めた彼女が紡ぐ音楽の軌跡に,今,触れる瞬間がやってきた。
新緑が眩しい4月,カナダにいるケイティ・ジョージに話を伺った。

―― 新作は自作曲が大半を占めているのに,スタンダードとのバランスがとても美しくとれていますね。どのように制作を進めたのか,教えてください。

カナダ全国を回るツアーの途中,数日オフがあったんです。バンドと2週間ほど演奏しながら旅をしていたんですが,ちょうど良いタイミングだと思って,「よし,新しいアルバムを録ろう!」と決めました。しっかりリハーサルができる機会って滅多にないので,アルバムを作るには理想的な状況だったんです。だから,このアルバムが生まれたのはツアー中にたまたまオフがあって,その時間を活かしてたくさん曲を書こうと決めたからなんです。それを実際に形にするには録音するのが一番だなと感じました。

―― 最初から具体的なコンセプトがあったわけではなく?

正直にいうと特別なコンセプトはなかったんです(笑) 何ヶ月も前に書いた曲がたくさんあって,他にもスタンダードの(作:ロバート・ライト&ジョージ・フォレスト)はミュージカル『キスメット』からのお気に入りで,原曲はロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンによるもの。最近は弦楽四重奏と一緒に演奏していて,彼へのオマージュにもなっています。カルテットで作品を作る時,スタンダードも必ず数曲入れるようにしていて,今回も,マイルス・デイビスで初めて聴いたなど大好きな曲を収録しました。特別なコンセプトはありませんでしたが,ツアー中に録音したことで,しっかり練り上げられた素晴らしい作品になったと思います。

―― タイトル曲はアルバム全体のトーンを見事に表現しています。軽快でキラキラしていて会話のような,ある意味,シアトリカルな雰囲気もありますね。

この曲は実は2分半くらいで書きました(笑) TikTok用にスマホを窓際に置いて,隣にいたドラマーに「ブラシで4ビート叩いてくれる?」と頼んで即興で作ったんです。「ハロー!ハウ・アー・ユー?」という日常の言葉からメロディーとサビが自然に生まれ,あっという間にアレンジまで出来上がりました。この曲はリスナーへの「ようこそ」の挨拶のような存在で,アルバムのタイトルにも,オープニングにもぴったりだと思いました。


『ハロー・ケイティ!』(spoon)

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