The Shape of Jazz Media to come.



井上銘 Tokyo Quartet.東京のにコミットするジャズとは ~出会いの記憶と未来への願い

ひとつの音が生まれ,誰かの心に触れる。その音が重なり,響き合い,やがて音楽が生まれる。井上銘の新作『Tokyo Quartet』には,そんな出会いと絆の物語が刻まれている。当時17歳だった石若駿との初共演,マーティ・ホロベックとの共鳴,デビッド・ブライアントとの邂逅——すべてが巡り,今,東京という交差点で奇跡のように重なった。共に音楽を奏でる喜びに満ちた彼らのサウンドは,東京の夜に確かに,そして宿命的に輝いている。

インタビュー/文:原田和典

八面六臂の活動を続けるギタリスト,井上銘がアルバム『Tokyo Quartet』をリリースした。5人組ユニット“STEREO CHAMP”による力作『The Elements』の発表も記憶に新しいところだが,自身の名を冠するアルバムとしては今回が5年ぶりのリリースになる。カルテットの構成員は,デビッド・ブライアント(p,key),マーティ・ホロベック(b),石若駿(ds)。顔ぶれも内容もグローバル,そしてすこぶる変化に富む。

「駿くんとは,メンバーの中で一番長いつきあいです。彼が17歳か18歳のとき,鈴木勲さんのトリオで初めて一緒になりました。演奏しているとスリルがめちゃくちゃあるけれど,人間的にとても成熟していて,共感力が豊かだから,寄り添ってくれるような安心感も与えてくれます。マーティとは,駿くんのバンドで“ジャズジャパン・アワード 授賞式”に呼ばれた時が初共演だったと思います。彼は本当に“自分の音”を持っているミュージシャンで,アーティストとしての意識という面でも共感できる部分が数多くあります。一緒に高め合える仲間ですね。デビッドとは,ジーン・ジャクソンのバンドで出会いました。“日本に引っ越してきたんだ”というので,“これから共演できるチャンスがいっぱいあるな”とわくわくしたのを覚えています。彼のアルバム『コート・オブ・アームズ』に参加した時にも感じましたが,デビッドの頭の中にある音楽を体験することで自分のセンスが磨かれているところは多いですね」


『Tokyo Quartet』(ReBorn Wood Label)