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【全文公開】Pure Blue Soul on JBL 伝統のブルーバッフルが鳴らすブルーノートの魂 最新スタジオモニターJBL「4369」で味わうモダンジャズサウンドの真髄


※幅630mm,高さ1120mmの堂々たるサイズを持つ4369のエンクロージャーは,スタジオモニター伝統のブルーバッフルを備えたウォールナット天然木による突板仕上げで,高級感と躍動感を兼ね備えた外観に心が躍る

今JBLの動きにファンの熱い視線が注がれている。ハイエンドの「サミットシリーズ」が話題をさらう中,ファン待望のスタジオモニター最新モデル「4369」が登場した。38cmウーファーと大型ホーンを冠した伝統のスタイルを継承しつつ,その中身はJBLならではの最新技術がぎっしりと詰まっている。ここではブルーノート85周年記念シリーズから不朽の名盤2枚をこの新世代の「青き名機」で聴く。

文:石田善之

しばらく話題から遠ざかっていたJBLだが,昨年の後半ごろから動きが活発になってきた。昨年後半に「サミットシリーズ」としてアマ,プモリ,マカルとヒマラヤの山々の名を持つ3機種のハイエンド・システムが登場した。いずれもEVERESTやK2の流れを汲むシリーズだ。だが,もう一方,JBL にはスタジオ・モニターシリーズがあり,その新製品が発売を間近にしている。
スタジオモニターシリーズの起源を辿ると,J.B.ランシングがJBL社を設立する以前,1937年に15インチ・ウーファーとコンプレッション・ドライバー+ホーンでクロスオーバーを800Hzとする2ウエイのICONICを作っている。その後,JBL誕生以後もこのスタイル,つまりスタジオ・モニターシリーズは作り続けられ,1971年に4320/4310のいわゆる43シリーズがスタートし,3ウエイの4333や4ウエイの4343が大ヒットした。今世紀になってからも,2010年に4365が登場し,2015年の4367が話題になった。オーディオファンにとって,常にJBLのスタジオモニターシリーズは注目される存在,と言ってよいだろう。


※新設計のアルミ鋳造フレームを持つ2219Nd-1Diferential Drive®ウーファー。デュアルボイスコイル,ピュアパルプコーンは前モデルの4367を継承するが,新たにデュアル・インパーテッド・ダンパーを採用,2枚対向に配置しスピーカーのコーン紙が「前に出る時」と「後ろに下がる時」で、ダンパーの復元力の差(非対称の歪み)を相殺,これにより、大音量時でも音が濁らず、波形が正確に維持される

最新技術で研ぎ澄まされた伝統の「38cmウーファー+ホーン」構成

JBLの4369は,38cmウーファーにコンプレッション・ドライバー+大型ホーン,ブルーバッフルという伝統のスタジオモニターである。堂々とした風格のある存在感十分なエンクロージャーは,25mmのMDFで作られ,ブルーバッフルの前面には16mmのサブバッフルが追加されている。38cmのウーファーは41mm厚のバッフルに固定され,このフロント側には写真からも分かる通り,バスレフのポートが設けられたシンメトリーなデザインでまとめられているが,バッフルの両サイドを大きく傾斜させることで視覚的な威圧感を抑え,天然木突板仕上げのバランスの整ったまとまりを感じさせる。このエンクロージャーを打診チェックしてみても,響きは抑えられ,内部の十分なブレーシング(補強)を感じる。  
トータルの重量は63.5kgということだが,設置用に脚やスペーサーを使うことなくアイソレーション・フット,つまり横方向の動きを抑え,振動を効果的に減衰させるという,既にSUMMIT SERIESにも使われている共通の仕様となっている。前面のブルーバッフル部分にはフロントネットが用意されているが,使うか,使わないかの選択はユーザー次第だ。
背面も隅々までシームレスで突板仕上げされ,金メッキされた入力ターミナルは横一列に低域用と高域用の4つが並び,バナナ型のジャンパーバーも付属している。
構成は2ウエイバスレフでクロスオーバーは800Hzだ。構成は前作の4367や4365に遡ることができるがそれぞれに新たな技術が加わり,今回この4369もピュア・パルプコーンは伝統そのものだが,細かく見ていくと,コルゲーションの違いなどで新たに開発されていることがわかる。
というのも,エッジの襞はより凹凸を深めた,振動板の前後への振幅が広がり,大入力に対してのリニアリティが考慮されたものとなり,そのためのダンパーも前後の動きに適したデュアル型として高エクスカーション時に発生する非線型歪みを相殺するものとなる。また,磁気回路も前作と同様ネオジウムマグネットが使われ75mmのデュアル・ボイスコイルとして新設計されたアルミ・ダイキャスト・フレームのなかに包み込まれる構造としている。前作と同様の形状に見えるこのアルミ・フレームだが,振動板の背面に対しての空気抵抗をより小さくするために開口面を広げた設計となり,マグネットに対しての放熱も十分なようである。
800Hz〜ハイエンドまでを受け持つホーン+D2ドライバーは75mmのリング型ダイヤフラムを2枚,それぞれにボイスコイルと磁気回路を持つもので,ふたつのコンプレッション・ドライバーを単一の筐体に結合する形だ。実はこれは前作の4367でも採用されている技術だが,これを発展させたサミットシリーズのMAKALUに用いられているコンプレッション・ドライバーとほぼ共通している。ただ,MAKARUはクロスオーバー周波数が本機4369よりも高くなるため,フェイズプラグにわずかな違いがあるようで,これが型番に示すD2830KとD2830Bとの違いになるようだ。また前後2つ,向かい合わせのリング・ラジエーターのダイアフラム素材は金属ではなくTIONEX結晶性樹脂だが,非常に強力かつ軽量というもののようである。


※中高域ユニットに新たに採用されたデュアルダイヤフラム,デュアルボイスコイル,デュアルネオジムモーター構造を搭載したD2830Bデュアルコンプレッションドライバー。特許取得済みのSonoglass High Definition Imaging(HDI™)ホーン技術との組み合わせで正確かつダイナミックな音像を満喫できる

JBLサウンドの要HDIホーンと緻密なネットワーク設計の妙

このD2ドライバーと一体となるホーンだが,JBLではHDIホーンと呼ぶ。ハイ・デフィニション・イメージング,つまり広拡散とコントロールされた指向性という意味で,近年のバイラジアルから発展させたJBLの大きな特徴のひとつとなっており,素材は今回も強靭でありながら固有振動が低く癖のないソノグラスが用いられ,これはダイキャストと同様に整形が可能なプラスティック素材である。
クロスオーバー・ネットワークを構成する基盤は,ウーファー用,ドライバー用それぞれを独立させ,その特徴はかなり大容量のコンデンサーが必要となる回路だが,内部に大型のコンデンサーは見当たらず,小型を数多く用いるマルチ・キャップ・キャパシターと空芯コイルを中心にまとめられている。遮断特性の発表はないが,ユーザーとして喜ばしいポイントとして挙げられるのは,中高域つまり1〜6kHz,そして5kHz以上のためのふたつのレベルコントローラーがバッフルの下の部分に設けられていること。±それぞれ0.5〜1.0dBのコントロールを可能としている。
音は,出た瞬間から圧倒される。圧力やパワーだけでなく同時に前に迫ってくる音像は,後方との距離感も十分で,左右のみならず前後の遠近感も聴かせる。ボク自身のリファレンスであるEVERESTと同様,これぞJBLサウンドであることをまず確認することができる。


※ターンテーブルはMark Levinson No5105を使用。ブルーノート85周年記念シリーズ(ブルーノート@85)の特徴であるカラーヴァイナルがよく映える

ブルーノート85周年記念盤を鳴らす圧倒的な実在感と音楽の熱量

今回の試聴盤はブルーノート85周年記念シリーズで,「スタンダードかつ高品質なリイシュー」という位置づけになる。現在のところ10タイトル,180gの重量盤でオリジナル・マスターテープからケヴィン・グレイによるオール・アナログ・マスタリングで直接カッティングされ,プレス工場はドイツOPTIMAL社,大きな特徴として盤そのものに黒ではなく青のカラービニールが使われていることが挙げられる。価格は1枚6,000円台になるようだ。
そのなかから,今回は2枚,まずはブルーノート4003『モーニン』を聴く。ピアノのイントロに始まり,お馴染みの2管による旋律は,リー・モーガンのトランペットが眼の前に朝顔を向けられたような勢いで迫り,時に耳が痛いほどの生っぽさで迫ってくる。やはりこの勢いはホーン・システムならではのものであり,曲の持つゴスペル色豊かなファンキーさが聴き手に訴えかけてくる。トランペット−テナーサックス−ピアノ−ベースとアドリブソロが展開され,特にジミー・メリットのベースは切れ味良く弾むようで豊か,かつ力強くハードバップの流れのなか,十分な存在感で,38cmウーファーならではの再生能力を聴かせる。まさにこれぞJBLサウンドと言えるだろう。
B面は<ドラムサンダー組曲>でアート・ブレイキーのエキサイティングさを目の前に見るような生々しさが味わえ,マレットの動きが想像できるような熱演ぶりが伝わる。これもホーン・システムの良さであり,こうした打楽器類の立ち上がりや強弱の鋭さがはっきりとしたプログラムはまさにホーン・システムの独壇場と言ってよいだろう。<カムレイン・オア・カムシャイン>では,ピアノに続くテナー・サックスのアドリブがどこか人なつっこさを感じさせ,「ゴルソン節」が印象的だった。 次もブルーノートの名盤中の名盤でジュリアン・キャノンボールがリーダーでマイルス・デイヴィスを従えるという,そうした面からも話題になった『サムシング・エルス』だ。1曲めの<枯葉>はマイルス・デイビスの独特なミュートが時にはジリジリとした響きをも聴かせ,旋律が淡々と奏でられるが,その後抜けるようなアルト・サックスに受け継がれる。バックのベースも淡々と進むが,アート・ブレイキーはブラシからスティックに持ち替え,雰囲気もガラリと変わり,開放感に満ちた空気になり若くエネルギッシュなアルトのサウンドを聴かせる。
こうした空気感までも表現してくれるスピーカーはそう多くはないだろう。トランペットにしてもアルト・サックスにしても,800Hzというウーファーとホーンのつながりが非常にスムーズであり,JBLの2ウエイの上手さに歴史を感じさせられる。B面はマイルスもミュートを使わずストレートなサウンドで,リー・モーガンでも感じられたように目の前にアサガオを向けられているという生々しさは同様だった。<ダンシング・イン・ザ・ダーク>ではデイビス抜きのカルテットでのキャノンボールがのびのびと歌い上げ,アート・ブレイキーも控えめにリズムを刻む。この録音は1958年ステレオ初期に行われ,旋律とリズムを左右に広げた収録だが,右のアルトの音を左へも返すというエコーも巧みに活用され,アルトの一層の音色の美しさが聴き手に伝わる。
今回の試聴盤の『サムシング・エルス』も『モーニン』も1958年,ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音で,こうしたジャズサウンドはアメリカに生まれ,アメリカで育った,まさにJBLの誕生から今日までの80年間と重なるものがあるようだ。 
更にローズマリー・クルーニーやナット・キング・コールなど男声女声のボーカルも聴いたが,まさに等身大の音像は大型システムならではの生々しさと言えよう。

■MODEL 4369 Studio Monitor 仕様

●タイプ: 2ウェイ・フロアスタンディング型スピーカー
●低域ユニット: 380mm(15インチ)径ウーファー「2219Nd-1 Diferential Drive ®ウーファー」
●中高域ユニット: 75mm(3インチ)径デュアル・コンプレッションドライバー「D2830B」+ Sonoglass High Definition Imaging(HDI™)ホーン
●推奨最大アンプ出力: 最大350W (RMS)
●公称インピーダンス: 6Ω
●出力音圧レベル: 93dB (2.83V/1m)
●クロスオーバー周波数: 800Hz
●周波数特性: 28Hz – 25kHz
●入力端子: デュアル金メッキ5ウェイ・バインディングポスト
●調整機能: HF/UHFレベル・コントロール(-1dB ~ +1dBの範囲で0.5dB刻み)
●外形寸法(幅x高さx奥行): W630×H1120×D470mm
●重量: 63.5g(1台)
●価格:1,760,000円(税込)

<試聴したアルバム>

『Moanin’/Art Blakey and The Jazz Messengers』(Blue Note)
『Somethin’Else/Cannonball Adderley』(Blue Note)