MILES IN FRANCE 1963 & 1964 マイルス・イン・フランス 第二期黄金クインテット アコースティック・マイルスの飛躍を捉えた未発表音源
- 2024年10月23日
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1964年,ジャズの歴史がまた一つ大きく動いた。マイルス・デイビス率いる「第二期黄金クインテット」の誕生だ。ウェイン・ショーターがサックスとして加わり,ハービー・ハンコック,ロン・カーター,トニー・ウィリアムスという名手たちが揃ったことで,バンドはこれまでにない新しい音楽的飛躍を遂げる。特にヨーロッパ・ツアーで見せた初期のライヴパフォーマンスは,まさにフレッシュで力強い響きを擁している。今回の『マイルス・イン・フランス 1963&1964マイルス・デイビス・クインテット─ブートレグ・シリーズ Vol.8』は,その貴重な瞬間を捉えた録音である。
文:小川隆夫
「黄金クインテット」結成の軌跡 ─ジャズ界に吹き込む新しい風─
1960年代にマイルス・デイビスが結成していた「黄金クインテット」は,64年夏に最後のメンバーとなるウェイン・ショーターが加入したことで,全員が勢揃いする。前年の春から新クインテット結成に着手したマイルスは,念願のショーターを迎えたことにより,従来にない音楽的な発展を遂げていく。
その始まりを告げたのが,63年春のウエスト・コースト・ツアーだ。このときは何度かメンバーの入れ代わりが起こる混乱が生じたものの,最終的に,マイルス,ジョージ・コールマン,ビクター・フェルドマン,ロン・カーター,フランク・バトラーに落ちつく。そして,ツアー直後,ロサンゼルスのスタジオでレコーディングされたのが『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』(コロムビア)他に収録された演奏だ。ただし,メンバーはあくまで暫定的だった。
その後,ニューヨークに戻り,ハービー・ハンコックとトニー・ウィリアムスを迎えたニュー・クインテット(コールマンとカーターはそのまま)で3曲を再録音したのは(ほかに,フェルドマンとマイルスが共作した〈ジョシュア〉を含む),こちらのグループに,LAレコーディング以上の可能性を感じたからだ。
新メンバー採用のいきさつはこうだ。ニューヨークでグループの再編に取りかかったマイルスは,親友のフィリー・ジョー・ジョーンズとクラブを回り,さまざまなドラマーをチェックしていた。そんなとき,ジャッキー・マクリーンの推薦で聴いたのがウィリアムスだ。17歳だった彼のプレイに,マイルスはすっかり魅了されてしまう。
続いて,ハンコックがグループに迎えられる。マイルスのトランペット仲間,ドナルド・バードが,1年ほど前に,自分のバンド・メンバーだったハンコックを彼の家に連れて行く。そのときに弾いたピアノが,マイルスの心に残っていた。それもあって,カーターとウィリアムスを得た彼は,「このリズム・セクションにフィットするのがハンコック」の結論に達した。そこで3人を家に呼び,リハーサルが開始される。
メンバー交代の話はまだまだ続くが,今回リリースされる『ブートレッグス・シリーズ Vol.8』に触れよう。ここまでの経緯でわかったように,このアルバムは,ニュー・クインテットになって約2か月,彼らが初めて行なったヨーロッパ・ツアーを収めたものだ。
▼本作のソニー・オフィシャル・サイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/MilesDavis/discography/SICJ-334
『マイルス・イン・フランス 1963&1964マイルス・デイビス・クインテット−−ブートレグ・シリーズ Vol.8』(Sony)