ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2025Mémoires(メモワール) ―音楽の時空旅行「ニューヨーク」もキーワードにジャズの名手が集う
- 2025年03月26日
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※ポール・レイ・トリオとオーケストラによる「ラプソディ・イン・ブルー」。2025年2月ナントにてジャン-フランソワ・ヴェルディエ指揮 シンフォニア・ヴァルソヴィアと © Mickaël Liblin LFJN 2025
文:神野秀雄
”熱狂の日”音楽祭が生まれたフランス・ナント
「ラ・フォル・ジュルネ」(LFJ,”熱狂の日”の意味)音楽祭が生まれたのはロワール河畔の港町ナント。アーティスティック・ディレクター,ルネ・マルタンはロックに観客が集まるのに,なぜクラシックに集まらないのかを考えた結果,約45分のコンサートを多数,安価で提供する音楽祭を考案,ナントの勅令が発布された城から近いナント国際会議場で1995年に開始した。2025年1月29日より第31回が開催され,壷阪健登も招聘された。ナントは17〜19世紀にアフリカ〜フランス〜北米/カリブ海を結ぶ仏最大の港として繁栄,フランス植民地だったニューオリンズからジャズが生まれた歴史とも無縁ではない。SF作家ジュール・ヴェルヌの生誕地でもある。
ドラマーの芳垣安洋は大友良英ONJQでナントを訪れた印象を語る。「オールドタウンと広い空間の両方がある素敵な街です。出演したジャズクラブ『パノニカ』での歓待。美味しいワインやビール,地方に力のあるヨーロッパの良さが詰まった街でした。グラン・エレファン(機械仕掛けの大きな象)は残念ながら見に行けませんでした」
KAJIMOTO社長の梶本眞秀は米留学後,キョードー東京でスティービー・ワンダー,アル・ジャロウ,マンハッタン・トランスファーなどを担当した経験もある。クラシックの新たな創造を模索する梶本はルネと意気投合,LFJに惚れ込み,ビジネス街から脱却する祭を求めていた三菱地所,東京国際フォーラムと結び2005年に東京開催を実現した。
音楽史に貢献した世界5都市にフォーカス
2025年は,「Mémoires(メモワール)―音楽の時空旅行」をテーマに音楽の発展に貢献した5都市とその時代に注目する。音楽史は一時期に文化・創造の中心地となった幾つかの大都市を軸に形成されてきた。世界を明るく照らす灯台のような都は,天才たちを一挙に惹きつけ,芸術・音楽の要地となり,輝かしい影響力で歴史に消えることのない足跡を残した。5都市とは,ヴェネツィア,ロンドン,ウィーン,パリ,そしてニューヨーク。
ルネが考えるNYの時代を代表する作曲家は,ジョージ・ガーシュウィン,レナード・バーンスタイン,アーロン・コープランド,ジョン・ケージ,スティーヴ・ライヒ,フィリップ・グラスなど。高水準のオーケストラ設立やコンサートホール建設でアメリカのクラシック音楽が大きく発展し,多くのヨーロッパの作曲家,芸術家たち,特にガーシュインのファンでジャズに影響を受けたモーリス・ラヴェルらを魅了した。武満徹がデューク・エリントンに学びたいと熱望しNYを訪ねた逸話も思い出される。ジャズがNYで発展し,ブロードウェイがミュージカルの世界の中心となった。新しい音楽スタイルが次々に生まれ,自らDJでもあるルネがヒップホップの発祥の地としてのNYで説明を締めくくるのも興味深い。
ナントで喝采を浴びた壷阪健登とポール・レイ
今最も注目すべきピアニスト壷阪健登。2024年にデビューソロアルバム『When I Sing』をリリース。石川紅奈とのデュオユニットsorayaも広く注目を集めロックフェス出演も多く,原田知世やCMへの楽曲提供も行う。佐々木梨子を含む『中村海斗/Blaque Dawn』への参加など目が離せない。2025年,壷阪はナントに招聘され,ソロと,ポール・レイとのデュオで出演した。ソロでは観客がスタンディングオベーションと鳴り止まない拍手で壷阪を讃えた。東京では4日にポールとのデュオ,5日にソロのプログラムがある。
※ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2025のメインビジュアル
●ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2025 ジャズ関連公演
「Mémoires(メモワール) ― 音楽の時空旅行」
2025年5月3日(土)〜5日(月) 東京国際フォーラム
公演詳細はlfj.jp
5月3日(土) 21:15 ホールC(公演番号126)
渋さ知らズオーケストラ(脱ジャンル音楽パフォーマンス集団)
ヴィヴァルディ: 四季を中心に
5月3日(土)21:30 ホールD7(公演番号137)
ポール・レイ・トリオ 「ラプソディ・イン・ブルー」
5月4日(日)19:15 ホールD7(公演番号236)
ポール・レイ(p),壷阪健登(p)
5月4日(日)19:15 ホールA (公演番号215)
ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ featuring KONA ROSE
エリック・ミヤシロ(tp, cond),Kona Rose(vo),小池修,鈴木圭,陸悠,渡邉瑠菜,鈴木真明地(sax),佐久間勲,山崎千裕,斎藤凛太郎,宮城力(tp, flgh),中川英二郎,藤村尚輝,小椋瑞季,吉野快(tb),宮本貴奈(p),川村竜(b),高橋信之介(ds),
5月5日(月)10:00 ホールA(公演番号311)
壷阪健登(p) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 横山 奏(指揮) 塚本江里子(司会)
ガーシュウィン: ラプソディ・イン・ブルー
5月5日(月)11:45 G409(公演番号342)
壷阪健登(p) ソロ
5月5日(月)21:00 ホールA(公演番号315)
東京フィルハーモニー交響楽団,ケンショウ・ワタナベ(指揮)
ガーシュウィン: ピアノ協奏曲ヘ調 +山中千尋(p),山本裕之(b),大井澄東(ds)
ガーシュウィン(レイ編): ラプソディ・イン・ブルー +ポール・レイ(p) ジュール・ビレ(b),ドナルド・コントマノウ (ds)
5月5日(月)21:30 ホールD7(公演番号337)オルケスタ・ナッジ!ナッジ!
ヴィヴァルディ: 四季を中心に
【講演会】5月5日18:30 ホールB5(2)
常盤武彦「ジャズ in NY ~アウトドア・コンサートの愉しみ」
※音楽祭期間中の有料公演チケット,または半券があれば無料入場可
●ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2025
https://www.lfj.jp/lfj_2025/