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Jaz.in Portrait Ibrahim Maalouf クォータートーンを出す4本バルブのトランペットで西洋と中東のサウンドを自在に融合する異才イブラヒム・マーロフ

インタビュー/文:佐藤英輔

イブラヒム・マーロフは,彼が生まれたレバノン/中東の音楽語彙に立脚したジャズを胸を張って送り出す異才だ。2012年(東京ジャズ)と13年以来の来日公演となる,この11月のトランペッターを5人擁するバンドによる“ブルーノート東京”での6公演は大盛況。そして,それは彼の確かな音楽力と人間力が導くものであったはずだ。フランスとレバノン,2つのパスポートを持つ彼は自らの出自についてどう考えているのだろう。

「僕はレバノンに生まれだけど,5,6歳の時に戦争の終わりが見られなかったのでパリに落ち着こうとなり,それ以降パリに住んでいる。そして,僕は2つの文化を存分に受けた。どっちの意識が高いのかとよく聞かれるんだけど,そのときに僕は“レバノン100%で,フランスも100%”と言っている。100+100,なんだ。文化とは積み重なっていくもので,引き算するものではないよね」

トランペット奏者である彼の注目点は,半音と半音の間の音(クォータートーン)を出すことを可能にするピストンを追加した,4つのバルブを持つ特別製のトランペットを吹いていること。元々はやはりトランペッターだった父親が開発したが,それにより中東の音階に沿う自然な演奏が可能となった。

「クォータートーンのトランペットを吹きたい人がいればすぐに手にできるように,僕は新しいブランドを作り売っている(※)。60年前にこれを開発した父親の思いを汲んだ結果のものとも言えるね。僕はまさに西洋と中東の影響を受けた音楽をやっており,そんな僕にはパーフェクトな楽器なんだ」


『Trumpets Of Michel-Ange』(Mister Ibe)

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