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MOVIE:「1975年のケルン・コンサート」

  • 2026年02月21日
  • NEWS


※本作の主人公の女性プロモーター,ヴェラ・ブランデス(マラ・エムデ 扮)

筆者が映画『1975年のケルン・コンサート』の日本公開を知ったのは,年の瀬も迫る頃だった。
1975年1月24日,ドイツ・ケルン歌劇場。キース・ジャレットが,ソロ・ピアノによる即興演奏を披露したその夜は,やがて『ザ・ケルン・コンサート』というタイトルでECMレコードから発表され,400万枚を超えるセールスを記録。ジャズ史に燦然と輝くアルバムとなった。だが,その神がかったステージの舞台裏では,開演直前までトラブルが相次ぎ,コンサートは中止寸前にまで追い込まれていた。その危機を救ったのは,わずか18歳の女性プロモーター,ヴェラだった。本作はそんな実話をもとに描かれている。
もっとも,ジャズファンにとってこのエピソードは,すでに語られてきた話でもある。正直に言えば,僕も最初はそれほど期待していなかった。だが,この作品は違った。ネタバレを防ぐため,詳しい筋書きには触れないが,天真爛漫なヴェラのプロモーターとしての行動力,そして体調不良の中で音楽の真理を追い求めるキース。ふたつの物語が同時進行し,やがて一つの軸として交わる。
印象的だったのは,キースとともにケルンへ向かう道中で,ジャーナリストのマイケル・ワッツが彼の内面に踏み込もうと,問いを重ねていく場面だ。そのやりとりから浮かび上がるキースの精神世界は,ジャズファンの心を震わせることだろう。終盤のシーンで,ライブの成功を信じて駆け回るヴェラの姿には,爽快感すらあった。
映像品質も良かった。カメラワーク,グレーディングのレベルも悪くなく,観る者はいつの間にか1970年代半ばのヨーロッパに身を置いたような気持ちになる。街の空気,人々の服装,そして何よりもジャズという音楽が置かれていた当時の社会的な文脈までが,自然と染み込んでくる。本作は,史実に基づいた脚本と,俳優たちの豊かな表現力がかみ合い,完成度の高い作品に仕上がっている。
4月10日より新宿ピカデリー,ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。(土方久明)

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