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ジャズ喫茶巡礼「田舎でジャズ喫茶」其の十三 ケニートーン(秋田・角館町)


※「ケニートーン」の由来は「憲二郎の音」。<自分が作る音色>という気持ちを込めた。ウッドベースの音が大好きで、Altecを選んだのは「ベースが美しく響くスピーカーだから」(荒川さん)。長い時間をかけて荒川さんが作り上げた大音量でも締まりの良い響きは絶品

写真/文:楠瀬克昌

まるで創業数十年といった風格を備えたジャズ喫茶だが,「ケニートーン」が開業したのは2022年6月とまだ新しい。1970年代に喫茶店として建てられ,十年ほど前から空き物件となっていたものを荒川憲二郎さん(67歳)が引き継いだ。この場所を得るまでには荒川さんなりの苦労があった。「両親が角館の出身で私も中学校の教師をここでずっとやっていたものですからジャズ喫茶をやるなら角館でと決めていました。しかし,知り合いから貸していただくはずだった物件が直前で話が立ち消えになるなどなかなか決まらず,ここが4件目でした」
外からは小さく見えたのだが建物の中は案外と広く,家賃は想定していた予算では足りなかった。「一度はあきらめかけましたが,家に帰って考えなおして『家賃はこれ以上出せませんが,そのかわり大家さんには毎日コーヒーを出しますし,この店を商談のときに使っていただいてもけっこうですから』とお願いをしたらご承諾していただきました」。このとき荒川さんは定年退職して以来着たことがなかったスーツを取り出しネクタイを締めて交渉にのぞんだが,後日大家さんに訊くと,やはりその意気込みも「効いた」そうだ。
高校生の頃からジャズを聴き始め,秋田市や盛岡市などのジャズ喫茶を周った。「いちばん通ったのは陸前高田の『ジョニー』でした。私はジャズの知識や理論のやりとりは性に合わないんですが,マスターの照井顕さんは『聴いて良ければそれでいいんじゃない』という人なので通いやすかったんです」(荒川さん)。

【機材】
スピーカー Altec 604-8G+カスタム・エンクロージャー
プリメイン McIntosh MA6800
プリアンプ Mark Levinson ML-10L
パワーアンプ McIntosh MC302,自作真空管アンプ
レコードプレイヤー Micro BL-101
アーム:SAEC WE-407,カートリッジ:Shure V15 typeV-MR
CDプレイヤー Denon DCD-S10Ⅱ

Kenny Toneケニートーン

秋田県仙北市角館町上菅沢」265-3
営業時間 14:00-21:00
定休日 水,木
TEL 090-7524-5744

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