ジャズ喫茶巡礼「田舎でジャズ喫茶【東京ローカル編】」其の十七 アルテック(東京都足立区)
- 2026年01月07日
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※椅子とテーブル以外は照明器具にいたるまですべてマスターがおよそ4年間をかけて独りで作り上げた店内。
※こちらの記事は本誌26号に掲載しております。
写真/文:楠瀬克昌
北野武がまだ学生だったころ、足立区の実家を出て新宿のジャズ喫茶でアルバイトをしていたことはよく知られているが、それは地方の若者が東京に出てきて働くこととよく似ている。東京のジャズ喫茶の歴史を調べてみると足立区のジャズ喫茶の名前は出てこない。雑誌や新聞には掲載されなかった店もあったのかもしれないが、東京23区内では足立区だけジャズ喫茶の記録がないのだ。2019年にオープンした「アルテック」はもしかすると史上初の「足立区のジャズ喫茶」なのかもしれない。
全盛期にも足立区にジャズ喫茶がなかったのは、近くに上野・浅草や銀座があったということも大きい。戦前から60年代までは東京ではこのエリアにジャズ喫茶が集中していた。今年83歳になる「アルテック」店主の小檜貞夫さんがいちばんよく通ったジャズ喫茶は、上野の老舗「イトウコーヒー」や有楽町の人気店「ママ」だった(ともにすでに閉店)。「ママ」といえばレコードをかける前に店主が客席に向かって講釈をする逸話が残っているが、小檜さんに「実際にやってましたか?」と尋ねると「やってました」と。そして「『ママ』の音はあんまりよくなかったね」と笑った。
小檜さんはレコードよりも「音」に対しての興味が強かったという。20代からアンプの自作を始め、「いい音」を求めて都内のジャズ喫茶を巡ったが、新宿の「ピットイン」などのライブスポットにもよく通った。「楽器の生の音が聴きたかったんです」。「音マニア」の小檜さんはタンゴから洋楽を聴きはじめたそうだが、結局ジャズ喫茶を開いたのはやっぱりいちばんジャズが好きなのだろう。
「毎日働いているうちに、なぜだかわからないんですけど<自分はジャズ喫茶をやらないといけないんだ>という使命感にずっととらわれてしまったんですよね」。小檜さんがその使命を果たしたのは70代に入ってからだった。「実家はこの店の前の通りをはさんだ向こう側にあったんですが、この建物が売りに出たときに甥っ子と共同で購入しました。当初からここでジャズ喫茶を始めるつもりでした」。

※AltecA5。エンクロージャーからウーファー、ドライバー、ホーンまでバラバラに買い集めて組み上げたもの。高能率仕様の往年の銘器に新たな息を吹き込んだ鮮烈なサウンドが大音量で堪能できる。
【機材】
スピーカー Altec A5(ウーファーAltec515B、ドライバーAltec288-8A、ホーンAltec311-90)
プリアンプ UESUGI U BROS-2/KIT
パワーアンプ 自作真空管アンプ
プレーヤー Denon DP-59L
CDプレーヤー TASCAM CD-RW900SL
ジャズ喫茶アルテック
東京都足立区西新井栄町3-10-4
営業時間 13時-19時
定休日 水
TEL 03-3840-4832
