BOOK REVIEW:「アンビエント/ジャズ〜マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜」(原 雅明 著,Pヴァイン刊)
- 2025年09月24日
- NEWS
アンビエント/ジャズがトレンドだ,という。アンビエントとジャズの間のスラッシュを全角ではなく半角で区切ってあるところがミソか。付かず離れず。意図が働いていることは確かだ。本書を一読すればその意味は理解できる。“ジャズの帝王”マイルス・デイヴィス,“アンビエントの先駆者”ブライアン・イーノ。著者はマイルスの音楽にアンビエントを,イーノの音楽にジャズの影響を聴きとる。体現者としての代表的な音楽家として菊地雅章,レーベルとしてECM(2000タイトルに近いカタログだが,即ち,コンセプト“沈黙に次ぐ最も美しい音”のコンセプト,総師マンフレート・アイヒャーに帰結する),そして近年,デンマークのギタリスト ヤコブ・ブロとの共演に光明を見出したベテラン打楽器奏者 高田みどり。この5人をキーワードにアンビエントとジャズの交差の歴史と現状を豊富な例証,傍証を交えながら語り尽くす。
著者 原雅明の略歴には生年,学歴が付されていない。先入観を避けるためか。が,このキーワードを冷静に客観的に俯瞰できる新しい世代のトップランナーであることは間違いない。デスクだけではなく現場をも仕事場としているだけにその言説は強い説得力を持つ。近年の音楽書では特筆に値する好著。本書でも言及される菊地雅章の幻の『六大』の復刻にも大いに期待したい。(稲岡邦彌)
▼詳細は下記ウェブサイトにてご確認ください。
https://www.ele-king.net/books/011900/