The Shape of Jazz Media to come.



ジャズ喫茶巡礼「田舎でジャズ喫茶」其の十五 THEE COFFEE(福井県三方上中郡若狭町)


※超モダンな照明によって非日常的な空間が演出された店内。レコード棚の裏側にも席が配置され、客同士に心地良い距離感が生まれる

写真/文:楠瀬克昌

熊川宿は江戸時代に発展した宿場町で,日本海側の若狭(福井県小浜市)と京都を結ぶ「鯖街道」と呼ばれる古くからの交易路にある。約300年前の町並みをそのまま残す古道沿いに建てられた土蔵をリノベーション,ジャズ喫茶として今年6月にオープンしたのが「THEE COFFEE」だ。
店主の中島祥さん(39歳)は2019年,東京のスペシャルティコーヒー専門店「SOL’S COFFEE 」熊川宿支店の店舗マネージャーとしてこの街にやってきた。当初は東京からの出張というかたちだったが2年前にここに移住,そして2024年11月,SOL’S COFFEEから独立して会社を設立,「THEE COFFEE(ジー・コーヒー)」を開業した。「THEE」は「汝の,あなたの,」という意味の古英語を用いた。当初の1年間は「SOL’S COFFEE 」の店舗のままで営業,今年に入って大規模改装を行い,「ジャズ喫茶」を始めた。若狭町のスタートアップ補助金600万円と銀行からの融資1,000万円の合計1,600万円,そしてそれまでの貯金を開業資金とした。「若狭町からの補助金が決まっていたことが銀行の与信審査での評価になったみたいですね」(中島さん以下同)。
「荷役馬を収容するために使われていたのでは」という約300年前に建てられた土蔵を改装した「THEE COFFEE」は,現代の店舗デザインの意匠設計が施された空間だ。快適性,機能性,そして審美性の追求が高度に融合したもので,ノスタルジックな「古民家カフェ」とはまったく異質のものだ。そこには「現代のジャズ喫茶のかたちを提示したい」という中島さんの明確な意図がある。
「座席の配置は客の視線や距離感に変化を持たせるようにして,独りで音楽を楽しみたい人も会話を楽しみたい人も,それぞれに居心地の良さが確保できる空間にしました」


※THEE COFFEE。熊川宿の古道の街並みのほぼ中心にある

【機材】
スピーカー Bozak B4000A Moorish
ターンテーブル Technics SL-1200MK3D
ミキサー Alpha Recording System Model 4100 mixer
パワーアンプ Crown D-150A Series II
CDプレイヤー Marantz PMD 331
カセットテーププレイヤー Marantz Stereo Double Cassette Deck SD555
電源 SST-075/W12CNF 耐震アイソレーション・ステップアップNF付トランス

THEE COFFEE

福井県三方上中郡若狭町熊川30-6-1 菱屋
営業時間 月,水,木10:00-18:00
金,土,日 10:00-21:00
定休日 火
電話番号(非公開)

▼「田舎でジャズ喫茶」特設ページができました