永武幹子と大村亘の双頭ユニット,eFreydutによるホールライブ
- 2025年11月26日
- LIVE REPORTS

※左から永武幹子(p),カノア・メンデンホール(b),大村亘(ds,tabla) Photo by Satoshi Hirano
永武幹子(p)と大村亘(ds,tabla)の双頭ユニットeFreydut(イフレイデュ)は,2023年夏にコロナ・パンデミックで延期されたニューヨーク・レコーディングを行った。2人に加えて,ジョエル・ロス(vib),アーロン・パークス(p,key)のグループで,ニューヨークを本拠に活躍する,注目の若手ベーシスト,カノア・メンデンホールが参加して制作されたアルバムは,『Fairway』とタイトルされ,2024年3月にリリースされる。それから1年余り,ついにレコーディング・メンバーによるリリース・ツアーが実現する。
そのツアーのハイライト,横浜市都筑区のボッシュ・ホールでのコンサートは,初めてジャズに触れる小学生も含めて,300人近い観衆を集め,好評を博した。オープニングは,アルバムと同様に大村のオリジナルの①だ。ホールの美しい響きが,トリオの抒情的なサウンドで,観客を包み込む。永武が,あらためて読み返したサン=テグジュペリの「星の王子様」にインスパイアされた②は,可憐なメロディが聴きどころだ。永武のオリジナルの⑤は新曲で,変拍子で水紋が広がる情景を描いている。ジャズに馴染みが薄い観客のために,2ndセットの冒頭では,最も有名なジャズ・チューンの一つである⑥がプレイされ,ピアノ~ベース・ソロの後に,ドラムスとのバース交換というオーソドックスなパターンで,観客を惹きつけた。大村のタブラは,④と⑧とアンコールの3曲でフィーチャーされる。タブラが描く細分化されたリズムのメロディと,永武のリリカルなピアノが融合し,メンデンホールの繊細ながら,力強いベースラインがトリオを牽引していた。万雷の拍手に応えたアンコールまで,eFreydutは一気に駆け抜け,このトリオの再会を期待しながら,幕を閉じる。日米の才能が,互いをインスパイアし,新たな地平を望むコンサートであった。(常盤武彦)
【Set List】
1st:①Savichara ②Le Petit Prince ③Melt Dough ④Petrichor ⑤水紋
2nd:⑥Autum Leaves ⑦Elephanta ⑧Touch Her Soft Lips And Part ⑨Liquidity
Encore:⑩Ektaal