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35歳の高岩遼が辿り着いた“JAZZLIFE”──コットンクラブ初登場


※写真提供/COTTON CLUB 撮影/ Tsuneo Koga

12月18日,高岩遼が9月にリリースした7年ぶりのジャズ・アルバム『TAKAIWA』のリリース記念ライブが開催された。この日は念願のコットンクラブ初登場となり,“JAZZLIFE”をテーマに2ステージ制で実施。クリスマスムードが高まる中,高岩遼のブルージーな歌声と洗練されたバンド・サウンドが会場を包み込んだ。
高岩遼は18歳でジャズ・ボーカリストとしてキャリアをスタートさせ,SANABAGUN.,THE THROTTLE,近年ではエレクトロ・ミュージック・プロジェクトのINF,千葉雄喜とのユニット・ニジーズなど多彩なフィールドで活動を続けてきた。35歳の誕生日にリリースしたシングル「なにもない」から始まったアルバム『TAKAIWA』は,スランプを経験し,岩手の実家でピアノと向き合う時間の中から生まれた。ジャズの王道へと立ち返りながら,フランク・シナトラへのオマージュを感じさせるスタンダードとオリジナルが自然に調和している。確かな表現力と独自のスタンスをもって,日本ジャズボーカル界の“今”を更新し続けるアーティストだ。
この夜のステージを支えたのは,ピアノにJin Inoue,ギターにSho Tomaru,ベースにTakashi Tashiro,ドラムにDaichi Hashizume,サックスにKai Ichikawaという信頼厚いメンバー。高岩の低音で深みのあるボーカルが,繊細でありながら芯の強いアンサンブルと美しく絡み合っていく。
1stステージは,高岩が一人でステージに現れ,JAZZ愛を朗々と語るマニフェスト〈The Verse〉で幕を開ける。自らピアノを弾く〈Blue In Heaven〉では早くも高岩のブルース感覚が際立つ。Jin Inoueにピアノを任せ,サックス以外のメンバーも入り,〈They Can’t Take That Away From Me〉で自身は歌に専念。フランク・シナトラの精神を現代的に読み替えたような表現力が光り,スターのオーラを改めて感じさせる。中盤の〈愛のテーマ (From “Spartacus”)〉で,サックスのKai Ichikawaが客席を練り歩きながら登場。穏やかな旋律が揺蕩う中,映画「スパルタカス」のカーク・ダグラスの気高さが高岩に重なり,目の奥が熱くなった。サックスの美しさが際立つオリジナルの〈ロジィタ〉では,高岩ならではのメロディメイカーぶりを発揮。その後のMCでは路上ライブ出身らしい親しみやすい語り口で,「Good Evening. Ladies and gentlemen! 楽しんでいってください」と観客を和ませた。
後半は高らかな歌声が印象深い〈The Song Is You〉を経て,高岩を残して一人ずつステージを去り,アルバムの核とも言える〈なにもない〉へ。弾き語りのシンプルな構成の中に込められた切実な言葉が,静かに,しかし確かに胸に響く。一発録りで収録されたこの曲の素朴さとリアリティ,魂の叫びが目の前でより強く浮かび上がり,まさに高岩の真骨頂。〈White Christmas〉では再度メンバーとともに季節感を添え,一足早いクリスマスプレゼントのよう。MCでは,高岩のユーモアあふれる漫談のようなトークが繰り広げられ,観客との距離をぐっと縮めた。〈You Make Me Feel So Young〉では軽やかなスウィングが会場を包み,ラストの〈My Way〉は,この日の流れを象徴する一曲として,彼自身の歩んできた道を静かに肯定するように響いた。アンコールでは再びKai Ichikawa,新たにサックスのTaiga TanimotoとトランペットのOto Arataniが加わり,〈Let The Good Times Roll〉を楽しそうにプレイ。編成が広がったことでサウンドは一層華やかさを増し,高岩はショルダー型のキーボードの腕前も披露し,会場は祝祭的な一体感に包まれた。
アルバム『TAKAIWA』の世界観を丁寧に再構築したセットリストは,シネマティックでありながらきわめてパーソナル。コットンクラブの良質な音響のもと,高岩遼の声に宿るブルースの哀愁と温度が,ゆっくりと観客に染み渡っていった。終演後には「変わらずいい声」「最高の夜」「ジャズってやっぱりいいな」といった声がSNSにあふれ,コットンクラブ初登場の夜は,彼自身の“JAZZLIFE”が鮮やかに刻まれた,記憶に残るステージとなった。(落合真理)

高岩遼
東京・丸の内「コットンクラブ」,12月18日(木)

■Setlist(1st)
1. The Vrese
2. Blue In Heaven
3. They Can’t Take That Away From Me
4. 愛のテーマ (From “Spartacus”)
5. ロジィタ
6. The Song Is You
7. なにもない
8. White Christmas
9. You Make Me Feel So Young
10. My Way
Encore:11. Let The Good Times Roll

■Personnel 
Ryo Takaiwa(vo,p),Jin Inoue(p),Sho Tomaru(g),Takashi Tashiro(b),Daichi Hashizume(ds),Kai Ichikawa(sax),Taiga Tanimoto(sax),Oto Aratani(tp)