村上春樹さんが語る デヴィッド・ストーン・マーティンとジャズ
- 2024年04月16日
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村上春樹さんが60年来のジャズの深い聴き手である事は良く知られている。その新刊『デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界』(文藝春秋)の表紙に並ぶパーカー,ゲッツ,ピーターソン,パウエルの鮮やかなアルバム・ジャケットに思わず見入った方は多いだろう。この伝説のデザイナーはプロデューサー,ノーマン・グランツが制作に関わったノーグラン(Norgran),クレフ(Clef),ヴァーヴ(Verve)といったレーベルのアルバム・デザインを数多く手掛けた。本作は村上さんが蒐集して来た180余枚に及ぶ彼のデザインによるアルバムを紹介してゆくというなんとも貴重で贅沢なものだ。村上さんを訪ね,デヴィッド・ストーン・マーティンとジャズについてお話を伺った。
ボストンの郊外での中古レコード屋巡り
― ジャズのお話とアルバムの美しさに幸福な気持ちになりました。
村上:ジャズの本って意外と書いてないんですよ。でもこのへんのジャズについては言いたいことがすらすら出てきますね。
― 和田誠さんとの『ポートレート・イン・ジャズ』以来でしょうか。
村上:あれは和田さんが人選して描いて,それに僕が文章を付けたので自分で選んで書くのとはちょっと違う形です。“ベストレコードはこれだ!”みたいな本を書くのは難しいですが何かを軸にして書くのは楽なんです,この本もデヴィッド・ストーン・マーティンを軸にして語る形です。
― きっかけは。
村上:しばらく前にボストンの郊外で中古レコード屋巡りをしたとき,棚の下の物入れに10インチ盤が突っ込んであったんです。見たらデヴィッド・ストーン・マーティンがごっそりと。「これいくらですか?」と聞いたら1枚2ドル(笑)。まとめて10何枚買ってきた時にそういえばDSMのものってうちにもけっこうあるよなって思って。そんな出会いがきっかけといえばきっかけですね。中古屋巡りは本当に面白い。
『South of the Border/Charlie Parker』(Mercury)1952
『Bird and Diz/Charlie Parker Quintet』(Mercury)1952