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H ZETTRIO Dynamics “異端”こそピアノ・トリオの伝統だ

H ZETTRIO Dynamics
ブラインドフォールドテスト後のインタビューにおけるH ZETTRIOの3人

H ZETTRIOの新アルバム『Dynamics』は,ジャズの多様性を探求する旅の成果である。メンバーのH ZETT Mは,「ブルース,ゴスペル,R&Bなど様々な音楽ジャンルの影響を受け,チック・コリアのように異なる要素を取り入れ,新たなサウンドを創造しています」と語る。このアルバムは,彼らがこれまでに聴いてきた音楽を吸収し進化させてきた結果であり,リスナーの反応も踏まえながら,独自の音世界を追求し続けている。またギネス記録を達成した定期的なリリースは,彼らの音楽的挑戦を加速・ジャンルとの境界を拡張させる。今回は3人に対しエリントンからグラスパーまでピアノ7作品のブラインドフォールドテストを行い,その正否やコメントから彼らの志向や背景を探るとともに,新作各トラックの成り立ちや意図も明らかにしつつ異端的ピアノ・トリオの創造的原点に迫ってみた。

古典から最新のジャズまでを吸収して,常に自分たちにとっての最新の「ジャズ」を生み出しているH ZETTRIO。ピアノのH ZETT M,ベースのH ZETT NIRE,ドラムのH ZETT KOUによるピアノ・トリオだ。鼻の頭に,Mは青,NIREは赤,KOUは銀の色がついた3人組でもある。2012年の結成以来,ジャズという軸をぶらすことなく,ライヴの場は家族連れの集うホールから,若者が集まるライヴハウスまで幅広い。
今回はそんなH ZETTRIOに,まず楽曲を聴いて誰の演奏かを当てるブラインドフォールドテストをしてもらった。

H ZETTRIOが聴く偉大なるマスターピース

最初に聴いてもらったのは,ホレス・シルバーの『ホレス・スコープ』から <ニカの夢>。Mはしばし聴き入った後,「これはホレス・シルバー」と当ててみせた。Mは「シルバーはファンキーと言われるんですけど,タイトルもかっこいい曲ばかりで,<ニカの夢>もBbmM7(Bフラットマイナーメジャーセブンス)の音が,すごくクールでスタイリッシュでおしゃれ。曲もキャッチーなものが多いですね。テーマをやって,ソロで盛り上がるというよりも,1曲として印象的なメロディーで,そこに惹かれますね」とホレスの魅力について語る。KOUは,<ニカの夢>は何度かカヴァーした経験もあると言う。

『Dynamics』(apart RECORDS)
『Dynamics』(apart RECORDS)