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ウィリアムス浩子が紐解く ヴォーカル好きを夢中にさせるLPシリーズ Supper Club

Supper Club

ジャズ黄金時代の珠玉の女性ヴォーカル作品40作を超えるタイトルが,「Supper Club」シリーズとしてリマスターが施された180gの重量盤LPで復刻されている。ここではオーディオファイルとしても名高い自身のアルバム「MY ROOM」シリーズを大ヒットさせ,同時にこの時代のヴォーカル作品をこよなく愛するシンガー,ウィリアムス浩子が,その魅了的なラインナップを思い入れたっぷりに紹介,愛すべきヴォーカル作品をターンテーブルに載せる悦びとともにじっくりとその魅力を味わっていただきたい。

文:ウィリアムス浩子
撮影協力:music house u3chi

スペインのレーベル「Supper Club」から40作を超える女性ヴォーカルの名盤ばかりがリマスタリング,180gの重量盤で復刻された。しかも,ボーナストラックは当時のレーベル枠を越えての選曲で,なんとも贅沢なレコードたちが世界発売。日本ではキングインターナショナルからリリースされた。今どき,これらのオリジナルを探そうものなら高額で手に入れるのも難しい上,良い状態のものに常に巡り会えるとは限らない。これは是非聴かなくてはと思っていたところ一本の連絡が入った。それらを試聴して記事を書いてみませんかという。私でいいんですかと,つい聞き返してしまった。こんな幸運なことはない。好きなヴォーカリストばかりだったからだ。拙宅リビングにあるオーディオたちも喜ぶだろうと二つ返事でお受けした。

その矢先に不測の事態。スピーカーが転倒し故障。音が出なくなってしまった。最近家族になったばかりの元気有り余る二匹の猫たちの闘争に巻き込まれたのだ。転倒を目の当たりにし,しばらく身動きが出来なくなったが正気を戻し,うん,猫は悪くない,と唱えながら震える手でスピーカーを起こしたところで,ふと,あるオーディオルームが頭に浮かんだ。私がクリスマスアルバムを録音したスタインウェイのあるその部屋は,ヴィンテージのJBLがいつも心地良いジャズを鳴らしていた。このアルバムたちを聴くには最高の環境ではないか。早速部屋のオーナーに連絡をしてみると「真空管あたためて待ってますよ」と優しいお言葉。曇っていた心に急に光が差し込み当日が待ち遠しくなった。久しぶりにオーナーご夫妻に会えるのも嬉しい。良い機会をくれた二匹に感謝だ。

試聴の日,そのオーディオルームの扉を開けると淹れたてのコーヒーの香りが私を迎えてくれた。古き良きジャズ喫茶に訪れたような心地良さ。挨拶とともに早速復刻盤のアナログをピアノの上に広げてみると,ジャケットのなんと美しいこと。オリジナルの色合いそのままに,全体的に統一感を持ったデザイン。これはコレクションして飾りたくなる。それにしても昔のジャケットって,なんでこんなに素敵なんだろう。しばらく見惚れてしまった。そのまま裏ジャケに目をやれば,そこにはオリジナルのライナーノーツが印刷されていた。
音楽は配信が主流になりつつあるなか,確かに便利になった分,失ったことも多いと思って
いるのは私だけではないだろう。こうしてアルバムを手にとり,眺め,その感触を味わいながらライナーを読んでいくひとときも音楽を味わう大切な時間だ。それぞれのジャケや曲について会話がひとしきり弾み,まずはどれから聴こうかと話しながらも,手は自然にベヴ・ケリーのアルバムへ。『Love Locked Out』。ちょうどオーナーもオリジナル盤を持っていたので試聴はこの聴き比べから始まった。

▼キングインターナショナル「Supper Club」サイト
https://www.kinginternational.co.jp/label/s/supper-club/