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LOUIS IN LONDON サッチモ生前最後のライヴ音源が発掘

20世紀最大の音楽家の一人にも数えられるジャズの王様,ルイ・アームストロング。彼の死後半世紀以上の時を経て,この程,最晩年の名演を納めた貴重な音源がついに日の目を見た。ここでは“日本のサッチモ”として世界的に知られるトランペッター/ヴォーカリスト,そしてルイの研究家としても著名な外山喜雄氏に,本作誕生の背景と聴きどころを,知られざるエピソード満載で綴ってもらい,さらに本作ライナーを執筆した,ルイ・アームストロング・ハウス博物館リサーチ部長のリッキー・リカルディ氏にインタビューを敢行,本作とサッチモの時代を超えた普遍的な魅力を紐解いていく。

文:外山喜雄

ルイ・アームストロングが1971年7月6日に亡くなって53年になる。サッチモの最晩年といえる1968年,英国BBCテレビに出演したルイの名演をとらえた貴重な音源が,7月12日『Louis in London』のタイトルで発売された。
生涯に4度結婚したサッチモが最愛のルシール夫人と結ばれたのは1942年。その年からルイが亡くなる71年まで夫妻が暮らしたNYクイーンズの自宅は,現在「ルイ・アームストロングの家博物館(Louis Armstrog House Museum)」として一般公開され,毎日多くの訪問者が世界から訪れている。
この‘ハウス’には,ジャズ創世紀から活躍したルイの貴重な資料とともに,1000本近い箱入りの録音テープが残されていた。自宅での友人との会話や,自叙伝,ジャズ史の想い出話の録音,クラシックからポピュラーまでの愛聴盤や,自分の昔の名演のダビング,ライヴ録音の記録など1000本近いテープである。その中にルイが生前テープを寄贈され,秘蔵していた英国BBCテレビ「Show Of The Week – Louis Armstrong」からの音源があった。実は,この英国旅行後ルイは病気で入院,後に回復したものの,体に負担のかかるコンサートツアーはこれが生涯最後となった。BBCから贈られた“最後のコンサート録音”をサッチモはとても気に入り,ジャズ評論家やバンドメンバー等色々な人にコピーを作り送っていたという。サッチモハウスに保管されていたオリジナル・テープの箱には『FOR THE FANS』(ファンのために)と大きく記され,彼の偉大な音楽人生最後となったコンサートライブの音を,ルイが誇りをもって多くの人に聞いてもらいたいと夢見ていたことが感じられる。
今回,ルイ・アームストロング・ハウス博物館調査部長を務め,ルイ・アームストロング研究の世界的第一人者のリッキー・リカルディさんが,BBCからオリジナル音源を入手CD化し,米ヴァーヴから発売,日本でもユニバーサル・ミュージックから同時発売されるものだ。

▼<ハロー・ドーリー!>のBBCにおけるライヴ映像を見る

この素晴らしき世界
『この素晴らしき世界~ルイ・イン・ロンドン・ライヴ・アット・ザ・BBC』(Verve)