スナーキー・パピーのメンバーから成る気鋭トリオが初上陸 ブロック・ランゼッティ・オガワ 初の来日公演inコットンクラブ
- 2024年10月01日
- LIVE REPORTS
©Yasuo Fukuda
文:落合真理
森の中から響きだすヴァイオリンの調べ,弦同士が絡み合う変幻自在なギター。そこにオーガニックなパーカッションが加わり,今宵のコットンクラブは,ブロック・ランゼッティ・オガワ(以降BLO。ヴァイオリン奏者ザック・ブロック,ギタリストのボブ・ランゼッティ,パーカッション奏者の小川慶太)の豊潤で摩訶不思議なアコースティック・サウンドに包まれた。
今年の4月にインパートメントの新サブ・レーベル「森の響(ひびき)」から第一弾アルバムとして,デビュー作『ドローイング・ソングス』をリリースした3人。もともとはスナーキー・パピーのメンバーで,コロナ禍でツアーがすべてキャンセルになったことがきっかけで結成された。当初はヴァイオリンとギターのデュオだったが,途中でパーカッションの小川が加わり,よりアーシーでカラフルな音色に深化。今回,念願の初来日公演が実現し,福岡,熊本,小川の故郷である長崎・佐世保と続いたBLOの日本ツアーは,ここコットンクラブでフィナーレを迎えた。
約70分のステージは,小川の色彩豊かなパーカッションのソロから始まった。スタートの「モロ・モロッコ」は,モロッコのグナワ・フェスティバルに参加した際に生まれた曲で,オリジナルは小川が所属する別バンドJ-Squadの楽曲だ。BLOバージョンでは,ブルーグラス風のアレンジが施され,よりフォーキーで爽やかなサウンドに仕上がっている。「ロス・カバリェロス」は,ラテン・ムードたっぷりのヴァイオリンソロが情緒豊かで美しく,小川のリズムがフローレスな森のサウンドを醸し出す。「ハッピー・ソング」は,ブロックがメインのメロディーラインを奏で,清々しい朝の目覚めのよう。アフロ・ペルー音楽のランドから着想を得ている「ジャンド」(曲名は日本語とランドを組み合わせたもの)は,謎めいたギター・エフェクトから幕を開け,ランゼッティのダイナミックなエレキギターの鳴動が冴えまくる。続く「スノー・クロウ」では,ブロックの不協和音からドラマチックな5分間のソロが展開される。やがてギターへとバトンが渡り,緩急自在のランゼッティ節から,三位一体の熱いサウンドが繰り広げられた。そして最後を飾るのは,タイトルソングの「ドローイング・ソング」。パンデミックで,学校が閉鎖されたブロックの双子の娘たちが,ひたすらリビングのテーブルで描き続けていた絵にインスパイアされた曲だ(アルバムジャケットは,ブロックの娘たちと小川の息子が描いた絵を掛け合わせたもの)。どこか懐かしくも,ミステリアスで神話的な雰囲気を漂わせるBLOのシグニチャーソングとなっている。アンコールは,スナーキー・パピーの『エンパイア・セントラル』から,ブロックのセルフカバー「ホニアラ」。少しダークな要素を含みながらも,親密でミニマムな美しいアンサンブルが奏でられた。
パンデミックが終焉した今,多忙な日々を送る3人であるが,空いた時間に集まっては,次のアルバムの構想を練っている最中だという。斬新だけれども,どこかノスタルジックで温かい独創的なハーモニーを奏でるBLO。彼らの音楽の旅はまだ始まったばかり。近い将来,シンガーを迎えた曲も録音してみたいという彼らの次回作が,どのような形で届けられるのか期待が高まる。
ブロック・ランゼッティ・オガワ 東京都・丸の内「コットンクラブ」
8月27日(火)
■Setlist
1. モロ・モロッコ
2. ロス・カバリェロス
3. ハッピー・ソング
4. ジャンド
5. スノー・クロウ
6. ドローイング・ソング
EN7. ホニアラ
■Personnel
ザック・ブロック(vln),ボブ・ランゼッティ(g),小川慶太(per)