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ROY HARGROVE’S CRISOL GRANDE-TERRE ロイ・ハーグローブの未発表ラテン・ジャズ・アルバム 『グランド・テール』が,録音から26年を経てリリース!

49歳という若さでのロイ・ハーグローブの急逝は,音楽界に大きな衝撃とジャンルを超えた数々のミュージシャンに深い悲しみをもたらした。1998年に録音されこの程リリースされた未発表作『グランド・テール』は,彼のラテン・ジャズの才能を余すところなく引き出している。活気に満ちたリズムとエネルギッシュなサウンドは,聴く者を高揚させ,ダンスへと誘う。このアルバムは,ロイの音楽的遺産を新たな光の下で再発見する機会を提供し,彼の存在を祝福する特別な一枚となっている。

文:村井康司

ジャンルを超えた数多くのミュージシャンたちに大きな影響を与えたトランペッター,ロイ・ハーグローブが49歳の若さで亡くなったのは2018年11月2日のことだった。オーソドックスなジャズはもちろん,「RHファクター」名義の活動でヒップホップやネオ・ソウルの音楽家たちやファンにも強く支持されていたこともあり,ロイの死によって音楽シーンが味わった欠落感はきわめて大きかった。
 それまで発表されていなかった録音が出ても,ロイの死によって生じた悲しみやシーンにとっての損失が埋められるわけではないが,それでもなるべく多くのロイの演奏を聴きたいと願うのはファンとして当然の気持ちだ。没後にリリースされたアルバムには2006~2007年に録音されたマルグリュー・ミラーとのデュオ『イン・ハーモニー』(2021年リリース)と1993年録音の『The Love Suite: In Mahogany』(2023年リリース)があり,特にやはり若くして亡くなったマルグリュー・ミラーと二人でスタンダードを演奏した『イン・ハーモニー』には心の底から感動したものだ。
 そしてこの10月18日,ロイの55歳の誕生日の2日後に,98年録音の未発表作『グランド・テール』がリリースされた。これはロイがグラミー賞「最優秀ラテン・ジャズ・パフォーマンス」部門を受賞した傑作『ハバナ』の続編として,98年にカリブ海のグアドループにあるスタジオで録音した作品。『ハバナ』と同じ「ロイ・ハーグローブ・クリソル」(「クリソル」はスペイン語で「るつぼ」を意味する)名義だが,参加メンバーはフランク・レイシー(トロンボーン),ミゲル・”アンガ”・ディアス(コンガ),ホセ・ルイス・”チャンギート”・キンターナ(ティンバーレス)以外は異なっている。

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『グランド・テール』(Verve)
『グランド・テール』(Verve)