TANNOYが誇る伝説的スタジオモニターが復刻!スーパー・ゴールド・モニター SGM10そのジャズ再生の実力を炙り出す
- 2025年02月27日
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世界的に知られるUKスピーカーブランド,タンノイ(TANNOY)が誇る伝説的スタジオモニター,スーパー・ゴールド・モニターシリーズがコンシューマー用として復活を遂げた。今回試聴するのは多くのスタジオで愛用され,数々の名盤を生んだシリーズの象徴的モデル SGM-10Bの改良復刻モデルであるSGM 10。ここではかつてレコーディングディレクター・音楽プロデューサーとして多くのアルバム制作に携わり,現在は気鋭のオーディオ評論家として活躍する和田博巳さんに,自身が愛聴するジャズ作品でそのサウンドを徹底的に検証してもらった。
文:和田博巳
Photo by Shinichi Takahashi
世界の超一流エンジニアに選ばれてきた
モニター・スピーカーの逸品
皆さんはTANNOY(タンノイ)という英国のオーディオ・ブランドのことはご存じでしょう。タンノイは1926年に創業した,現存する最も歴史ある英国のスピーカーブランドの一つで,タンノイの歴史は,英国の放送と録音機器産業発展の歴史そのものであると言っても過言ではない。録音制作の現場においては,デッカやEMIレコーディング・スタジオをはじめとする世界の有名録音スタジオに,モニター・スピーカーとして導入されてきた歴史がある。1970年代に登場して,タンノイの名を一躍有名にしたタンノイ・オリジナルのスーパー・レッド・モニターの置き換えモデルとして,スタジオレコーディングの黄金時代,1985年に登場して大活躍したのが,オリジナルのSGM(スーパー・ゴールド・モニター)-10である。SGM-10は,その多くがダグ・サックスによるカスタムネットワークを搭載した。ダグ・サックスは,数々のグラミー賞を受賞した伝説のマスタリング・エンジニアである。主宰するマスタリング・スタジオ,「ザ・マスタリング・ラボ」独自仕様のSGM-10Bで,多くの名盤を製作。スティーリー・ダン,『エイジャ』,ポール・マッカートニー,『キス・オン・ザ・ボトム』,ダイアナ・クラール,『ライブ・イン・パリ』など,数多くの名盤を手掛けたレコーディングエンジニアの巨匠アル・シュミットも,生涯に渡って,このSGM-10Bカスタムの愛用者の一人だった。
また,マイケル・ジャクソン『スリラー』や,プリンスの『パープル・レイン』を手掛け,80年代にはタンノイとエンドース契約していた,マスタリング・エンジニアのバーニー・グランドマンも,SGMの愛用者だ。自身のハリウッドのスタジオのみならず,東京に新設したスタジオにもSGMを導入したことが,過去のインタビューで語られている。世界の超一流エンジニアに選ばれてきたモニター・スピーカーの逸品が,2024年7月 から,ティアック/エソテリックにより,輸入販売されて,我が国でも,数々の名録音の音質をそのままに聴ける。
※試聴中の和田博巳さんは各楽器の出音,奥行き,空気感を,そのアルバムが生まれた背景を重ねながら注意深く省察していく
以前からレコードを僕はよく聴いていたが,近年はアナログ・レコードの人気の高まりが目覚ましい。今回,筆者は,エソテリックの試聴室に赴いて,持ち込んだ幾つかの録音のいい愛聴盤LP,CDなどをタンノイSGM 10で聴くことができた。
アナログ・プレーヤーは,エソテリック創立35周年記念モデルのGrandioso T1。カートリッジはオルトフォンのMC型で,カンチレバーに無垢のダイアモンドを採用したVerismo(ヴェリズモ)をセットした。フォノイコライザー・アンプにはエソテリックのGrandioso E1を使用。E1は,エソテリック独自のMCバランス電流入力を装備して,MCカートリッジの発電エネルギーを最も効率的に,ロスなく取り出すことができる。ジャズをアナログ再生するには理想的な音質を備えていて,ジャズ・ファンでアナログ・レコードのファンには特にお勧めする。エネルギッシュで躍動感溢れる音が聴けるフォノイコライザー・アンプなのだ。
そして,タンノイSGM 10は,僕が実践推奨するニアフィールド・リスニングにぴったりのスモール・モニター・スピーカーでもある。伝説的スタジオモニターSGM-10Bの現代版で,家庭用としても大変使いやすいサイズである。ウーハー254mm(10インチ)の中心に,ホーン型トゥイーター33mm(1-1/3インチ)を組み込んだ,豊かな低域とクリアーな中高域が,絶妙にブレンドしたサウンドを提供する。タンノイは「デュアル・コンセントリック(同軸型2ウェイ)」スピーカー・ユニットと呼ぶドライバーを,1947年に開発,その後数十年に渡って改良を重ねてきた。SGM 10は,数限りない名声を与えられてきたこの秀逸な同軸ドライバーの最新バージョンを搭載している。憧れのスタジオ用ニアフィールド・モニター・スピーカーが,家庭で使うことができるようになったのである。
▼この取材の模様を収録した動画「オーディオ伝道師 海苔屋のマッシー」YouTubeチャンネル