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Old and New Dreams 大友良英が“ピットイン”で描いた無限の音宇宙

Old and New Dreams 大友良英が“ピットイン”で描いた無限の音宇宙
※2024年12⽉27⽇ 新宿ピットイン昼の部。左から大友良英(g),須川崇志(b),⽯若駿(ds) Photo:Motoaki Uehara

毎年末恒例となった新宿ピットインでの4デイズ公演から,大友良英による2つのライヴ・アルバムOld and New Dreams『序』『破』がリリース。昼夜の異なる編成で録音された大友の対作品は,日本のフリー・ジャズ史を体現してきた先達・山下洋輔と山崎比呂志,その遺産を継承しながら新たな地平を模索する若手・須川崇志と石若駿との共演によって,タイトルそのままに,世代と精神の交差点を鮮やかに浮かび上がらせている。

インタビュー/文:佐藤英輔
写真;上原基章

対を成すライヴ・アルバム『序』と『破』の誕生 ~一日での二部構成ライヴ録音

質/意義ともに秀でた,対となるライヴ・アルバムがリリースされた。世界に名を馳せるギタリストである大友良英の,『序』と『破』。ともに昨年暮れの新宿ピットインにおける彼の4デイズ公演のなかの1日,その昼の部と夜の部に録音されたものだ。その出し物は帯として<Old and New Dreams>と題されていたが,それには1959年生まれの大友にとっての体験や記憶や意欲や希望が投影されている。『序』はダブル・ベース奏者の須川崇志(1982年生まれ)とドラマーの石若駿(1992年生まれ)とのトリオであり,『破』はピアニストの山下洋輔(1942年生まれ)とドラム奏者の山崎比呂志(1940年生まれ)とのものだ。両盤にはオーネット・コールマンの「ロンリー・ウーマン」,アルバート・アイラーの「ゴースト」や大友作の「空が映えた2022年11月18日水曜日」,さらにフリー・インプロヴィゼイション曲群が収められる。日本のフリー・ジャズ界の積み重ねとこれからを俯瞰するような,この2作について話をきいた。

――今回の2つのトリオ作品なんですが,毎年12月末恒例の新宿ピットイン帯公演での出し物がソースなんですよね。うち,27日の昼の部と夜の部の模様がそれぞれアルバム化されました。最初から,この日は録音しようと思ったのでしょうか?

「はい。この<Old and New Dreams>という全体の公演タイトルもこの2つのセットから思いつきました。録音したいなという思いを実現してくれたのが(共同プロデュースを務める)上原(基章)さんです。彼が動いてくれたのが大きかった。自分だけだと(録音したものを)一回聞くと,いつも出したくなくなっちゃうから。これで行こうって押してくれるプロデューサーがいて,しかも今回はディスクユニオンも巻き込んでしまったんで,これはもういい演奏をするしかないと追い込まれたのが,この夜の録音。自分の中ではこの夜と昼をセットとして考えてたので,昼の部の演奏はディスクユニオンで無理だったら自分で出したいって思ってたんですが,相談したら“組”で出すことになりました。もともと2つセットでやるつもりではいたけれど,2つとも同じレーベルから出せるとは思ってなかった」

Old and New Dreams 大友良英が“ピットイン”で描いた無限の音宇宙
※山下洋輔(p)と山崎比呂志(ds) 2024年12⽉27⽇ 新宿ピットイン昼の部にて Photo:Motoaki Uehara

――ところで<Old and New Dreams>という表題なんですけど,高校時代からの大友さんのジャズ心象がライナーノーツで書き留められていますが,これは日本のフリー・ジャズ受容/展開に対する思いが込められたものなんですよね。

「もちろんそうですね。元々のタイトルはデューイ・レッドマンやドン・チェリーらのECMからのアルバムで,あれはオーネット・コールマンのもとにいた彼らがオーネットなしでやっている。それを自分に置き換えて,俺の個人的なヒストリーと,それから“ピットイン”という日本のジャズにとってすごい重要な場所が交わるようなものにしたいと思ったんです」


『Old and New Dreams chapter.1 序』(DIW)


『Old and New Dreams chapter.2 破』(DIW)