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パスクァーレ・グラッソ モダン・ジャズ黄金時代に共鳴する旋律美

ニューヨークのジャズシーンで注目を浴びるギタリスト,パスクァーレ・グラッソ。ギターをまるでピアノのように滑らかに爪弾き,ビバップの名曲に新たな命を吹き込む彼の演奏には,技巧を超えた深い抑揚と探求心が宿る。これまでもパット・メセニーをはじめ多くのミュージシャンを魅了してきた彼の最新作『ファーヴァンシー』は,モダン・ジャズ黄金時代にフォーカス。彼ならではの温かい音色は,リスナーの心に新たな共鳴と感動を呼び起こすことだろう。

インタビュー/文:落合真理

ニューヨークのジャズシーンを席巻する驚異のギタリスト,パスクァーレ・グラッソ。サマラ・ジョイを見出した若きマスターの傑出した技巧と演奏は,音楽への深い愛と探求心に満ちている。兄とともにジャズの巨匠たちの楽曲に向き合った日々を礎に,独自の演奏スタイルを確立。約3年ぶりの最新トリオ作『ファーヴァンシー』は,ビバップの名曲をパスクァーレ独自のギターメソッドで昇華している。ニューヨークとイタリア,それぞれの文化で磨かれたセンスと言葉から,彼の真摯な姿勢と尽きることのない情熱が伝わってきた。
 
――今作にはバド・パウエルの<サブ・シティ>を筆頭に多くのジャズの名曲が収録されていますが,特に思い入れのある曲は?

「全部だよ! どの曲にも深い繋がりを感じる。もう30年以上ジャズを演奏しているけれど,一度も飽きたことがないんだ。タッド・ダメロン,バド・パウエル,チャーリー・パーカー,彼らの音楽を演奏するのは本当に楽しいし,イタリアで兄(※サックス奏者ルイージ・グラッソ)と演奏していた頃を思い出す。その頃,私たちはバンドを組んでダメロンやパーカーのトリビュート公演を開いていた。兄と肩を並べて演奏した日々は,今でも私の宝なんだ」

――タイトル『ファーヴァンシー』(※強い感情という意味)は辞書で偶然見つけた言葉だと聞きました。本作の感情的または音楽的なテーマとどのように結びついているのでしょうか。

「今回の録音時期は,僕にとって感情的に大きな意味を持つ時期だった。まず,師であるバリー・ハリスの死。彼とは幼少期から深い関係があって,彼のワークショップにも通っていたので,その喪失は計り知れないほどだった。もう一つはサマラのバンドを離れ,自分の音楽に集中する決意をしたこと。ツアーでは味わえないNYのジャズシーンの魅力を再確認して,自分の仲間たちと演奏する道を選んだ」

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『ファーヴァンシー』(Sony)