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ジャズ喫茶巡礼「田舎でジャズ喫茶」其の十一 ジャズと喫茶 フィガロ(静岡県富士宮市)


※メインスピーカーはボザークのB300 Mediterranean。12インチウーファーと2インチ2個のツィーターによる2ウェイ構成。アメリカ東海岸生まれのボザークは「クラシック向け」とされ、これまでジャズ喫茶で使用されたことはほとんどないが、その渋く重厚なサウンドはむしろ「イーストコースト・ジャズ」によく合う

写真/文:楠瀬克昌

富士山の南西麓に位置する富士宮市は,富士山信仰の中心である富士山本宮浅間大社の門前町として平安時代より栄えてきたが,この街に《ジャズ喫茶》があったことはかつてない。「ジャズと喫茶 フィガロ」の店主峰紀章さん(53歳)がこの街の商工会議所や銀行に開業の相談をもちかけたときには「え?《ジャズ喫茶》ですか?」と驚かれ,友人には「おまえ,どうかしたのかよ」と忠告された。しかし,2024年8月にオープンして8ヵ月がたった現在,融資を受けた銀行からは「がんばってますね」と数字を評価され,紀章さん自身も「こんな店になればいいなと思い描いていた通りになってきて驚いています」という。
峰紀章さんと妻の亜由美さんはこの街の出身ではなく,夫妻が神奈川県葉山町に住んでいたころに紀章さんが単身赴任で富士宮市内の職場に務めはじめてからこの街との縁がはじまった。「学生時代からリスニングバーのようなことをやりたいと漠然と思っていまして,この物件を見つけたときに『ここならいける』とピンときたんです」(紀章さん)。築90年以上と推定される建物は「フィガロ」になる以前はクラフトビールの立ち飲み屋で,もとはこの街でいちばん古い精肉屋だった。
「改装にともなう工事などがたいへんでした。建築当時の施工者はもういないので,柱1本を動かすにも検証や確認を取る必要がありまして,そのために工事が2ヵ月ぐらい遅れました」(紀章さん)。しかし,峰夫妻はこうした「制約」も含めて楽しんでいるようだ。古いものの良さを見つけ出し,それを大切にするのが二人のスタイルだからだ。

【機材】
プレーヤー  DENON DP-500M
スピーカー  BOZAK B300 Mediterranean  
プリメインアンプ LUXMAN SQ 606,YAMAHA CA RI

ジャズと喫茶 フィガロ
静岡県富士宮市大宮町12-3
営業時間 13:00-21:00(ラストオーダー)
定休日 火曜,隔週水曜
(電話は非公開)

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