【全文掲載】Polk Signature Elite ES20 & Reserve R500 コスパ抜群のアメリカン・スピーカー2モデル+DENONアンプ&CD+アナログ・プレーヤーで「理想のジャズ聴きシステム」を手にいれる
- 2025年05月21日
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※D&M試聴ルームにて。SIGNATURE ELITE ES20といずれもDENON製 SACD/CDプレーヤー:DCD-1700NE,プリメインアンプ:PMA-1700NE,アナログ・プレーヤー:DP-3000NE(385,000円)+フォノカートリッジ:DL-103Rの組み合わせ
本誌17号に掲載したオーディオ評論家,山本浩司氏が提唱する「理想のジャズ聴きオーディオシステム」の考察は大きな反響をいただいたが,我々の前には厳しい予算の壁があるのも事実。それでもできるだけ最高の音質でジャズを楽しみたい…。今回はそんな要望に応える一つの選択肢としてコスパ抜群のアメリカン・スピーカー Polk Audioの2モデルとDENONのアンプ,プレーヤーの組み合わせを提案,ジャズ・リスニングのポイントを満たす理想の再生を山本氏に実践してもらった。
文:山本浩司
本誌9号(2024年8月号)「“越境する2024年型ジャズ” カマシ・ワシントンの新作を聴く」という記事で,米国ポークオーディオのスピーカーR200をご紹介した。ペア10万円以下で,カマシの最新作『Fearless Movement』の混沌とした音像・音場デザインを見通し良くクリアーに表現したい,各楽器の音色をそれらしく,正確に描写したいと考えたときに,これほどふさわしいスピーカーはないとの確信を深めた試聴取材だった。ここでは,引き続き同社製スピーカーES20とR500を採り上げ,さまざまなジャズ・アルバムを再生して,その魅力を考察してみたい。
現在我が国に輸入されているポークオーディオの製品は3ライン用意されていて,安価な順に「MONITOR XT」「SIGNATURE ELITE」「RESERVE」シリーズとなる。ES20は中級ラインの「SIGNATURE ELITE」に属する小型2ウェイ機,R500は最上位ライン「RESERVE」のトールボーイ型ダブルウーファー2ウェイ機である。もっとも最上位シリーズに属するスピーカーと言っても,R500はペア154,000円,ES20にいたってはペア57,200円という安さである。
テストはポークオーディオの輸入元,D&M本社の試聴室で行なった。再生システムはSACD/CDプレーヤーがDCD-1700NE,プリメインアンプがPMA-1700NE。どちらもデノンの主力製品で,ともに20万円前後の製品だ。アナログ・プレーヤーは同じデノンのDP-3000NE(385,000円),フォノカートリッジはDL-103R(63,800円)である。
さて,ジャズを聴く上でぼくが重要だと考えているポイントが3つある。一つ目が「帯域バランスの真っ当さ」だ。低音端や高域端がグンと伸びた超ワイドレンジ・スピーカーであったとしても,音楽のファンダメンタル帯域である中低域から中域が薄く,音が痩せていてはジャズの肉体性を感じ取るのは難しい。二つ目が「音色の忠実性」。トランペットやベース,ピアノ,シンバルなどが“自分が考えるそれらしい音色”で聞こえなければ,ジャズを聴く感動が薄れることは言うまでもないだろう。そして三つ目が「躍動感」である。優れたジャズが本来持っているはずのスウィング感をそのスピーカーが引き出せなければ失格と言うほかない。聴いていて思わず身体が動き出してしまうようなグルーヴを引き出すことこそジャズ・オーディオの生命線だとぼくは考える。
空間再現力やローレベルのリニアリティ,静寂の気韻の深さなど現代ハイエンドオーディオ・シーンで求められる音のファクターは,ぼくにとってこの3つのポイントに続く評価項目なのである。ES20とR500は,この3つのファクターを高レベルで満たしていることを実感させたことをまずお伝えしておきたい。
最初に聴いたのは「SIGNATURE ELITE」のES20。マイカを加えて剛性を上げた樹脂系(ポリプロピレン)16.5センチ・ウーファーとポリエステル系合成繊維を振動板に用いた25ミリ・ソフトドームトゥイーターを組み合わせたバスレフ型2ウェイ機で,バスレフポートは背面に配置される。このポートは「パワーポート」と命名されており,形状を工夫することで低音の歪みやエアーの乱気流を抑えるとともに開口部の表面積を拡張,一般的なバスレフポートに比べて約3㏈の出力アップを実現しているという。
ここでは金属製スピーカースタンドに本機を載せて試聴した。入力端子はシングル仕様,スピーカーケーブルはオーディオクエストのQ2を用いた。
まずオノセイゲンがリマスターし,コンパイルしたSACD『Jazz,Bossa and Reflections Vol.1』からオスカー・ピーターソン・トリオの「You look good to me」を聴いた。3人の名手が刻む4ビートを滋味深く,端正に描写する。ベースの弾む感じやキックがドンと入るところのリアリティがハンパではない。ペア5万円台のスピーカーながら,聴き応え抜群なのである。
ジョン・ゾーンのCD『マサダ・カルテット』の闊達なサウンドの表現にも感心させられた。アルトサックスの押し出しの良さが出色だ。ジュリアン・ラージのイマジネイティヴなギターソロもスリル満点,ベースのアタックと余韻のバランスもちょうど良い。五重奏団が一体となって火を噴くようなグルーヴを醸成していることに感心してしまう。あまりに気持ちよくて,ボリュウムノブをぐいと上げて大音量再生してみたが,このスピーカーはじつにタフで,サチったり,ピークリミッターがかかったような感じにならないのである。ジャズを聴く醍醐味はここにあり,と思う。ただし,大音量再生時にスピーカーの背面に近寄ると,ポートノイズが気になったことを申し添えておく。
アナログレコードを聴いてみよう。ソニーの復刻シリーズ「ジャズ・アナログ・レジェンダリー・コレクション」から2月19日に発売された『ブラックホークのマイルス・デイビス』(1961年録音)と『E.S.P.』である。
前者はサンフランシスコのジャズクラブで収録された,マイルス初のライヴ正規盤2枚組。当時限定リリースされた青色のカラーヴァイナル盤での発売だ。クールな熱狂に満ちた演奏のすばらしさが甦るナイスな復刻だが,いま改めて聴くとロン・カーターのベースの録音レベルが低く,低音がさびしい…というのが自宅のシステムで聴いての感想だったのだが,ES20で聴くと,それがそうでもないのだ。バスレフ設計が上手いのだろう,ベースの音域に適度な量感が加わり,ぼくにとってより好ましいエネルギーバランスが実現されるのである。加えてトニー・ウィリアムスのドラミングの鮮烈さ,マイルスのシングルトーンの鋭利さが生々しく再現され,その魅力的な再生に心を奪われた。
『E.S.P.』はウェイン・ショーターを迎えた第2期黄金カルテットの初スタジオ・レコーディング・アルバムで,全曲メンバーのオリジナル曲という意欲に満ちた作品だ。五重奏団の緊張感に満ちたインタープレイが見事な録音で捉えられているが,ES20はそのムードと新鮮なハーモニー感覚をリアルに引き出してくれるのである。トニーのシンバルの連打も安光りすることなく,厚みを伴っていて聴き応えがある。中域の厚みが十分に保たれているからだろう。何度も書くが,この音でペア5万円台。こんなスピーカーでジャズに出会うことができる人は,間違いなく幸せだろう。
R500は,ES20とよく似た帯域バランス,音色を実感させながら,そこにより雄大なスケール感と躍動感が加わったすばらしいサウンドを聴かせた。R500は,13センチの樹脂系コーンにタービン形状を持たせて剛性を高めたウーファー2基と高域エネルギーの拡散性を向上させるウェイブガイド付きリングラジエーター型トゥイーターを組み合わせたトールボーイ型2ウェイ機。バスレフポートは背面にあるが,これはES20以上に凝ったつくりになっている。ポートの中に一対のアブソーバー(消音器)が組み込まれていて,共振によって生じる歪みを除去しているのである。実際に大音量再生時でもES20で気になったポートノイズが生じることがないことがわかった。なるほどこういうところに上位シリーズの優越性が感じられる。
また,ウーファー口径ぎりぎりまでバッフル幅を狭めていて,バッフルでの反射や回析などの悪影響を排除していることもあるのだろう,音場の広さやステレオイメージの再現性がES20以上にすばらしい。ジョン・ゾーンの『マサダ・カルテット』を再生すると,後方に定位するドラムズと前方に張り出してくるアルトサックスとギターの対比がES20以上にくっきりと浮かび上がり,その面白さにくぎ付けになった。
マイルスの『E.S.P.』で聴けるインタープレイの面白さもES20以上。100万円以上もするような高級スピーカーに比べると,情報量,音数の多さでは劣るが,本機をはじめポークオーディオのスピーカーは「聴くべき音」をクローズアップする能力がきわめて高い気がする。音楽の本質を浮き彫りにする力が強いと言ってもいいだろう。このアルバムでもトニーのドラミングの鮮烈さ,音数を絞ってクールな熱気を放出するマイルスのソロの魅力を誰にでもわかりやすく提示するのである。
これからジャズを深く聴き込みたいという入門層の方にとって,ポークオーディオのスピーカー群ほどふさわしい製品はないだろう。「Jaz.in認定コンポ」としてES20とR500を太鼓判を押してお勧めしたい。
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【対象製品】
Reserveシリーズ
フロアスタンディング・スピーカー:R700,R600,R500
ブックシェルフ・スピーカー:R200,R100
Signature Eliteシリーズ
フロアスタンディング・スピーカー:ES60,ES55,ES50
ブックシェルフ・スピーカー:ES20,ES15
注)対象製品1組のご購入につき1回の応募に限定
対象のフロアスタンディング・スピーカー1台のみのご購入はキャンペーンの対象外
【プレゼント賞品】
R700,R600,R500をご購入いただいた方
1. スピーカーケーブル:AudioQuestQ2 3mペア バナナプラグ仕様 (Q2/3M/B)
希望小売価格:26,400円(税込)
2. オーディオケーブル(RCA):AudioQuest Red River 1.5mペア (REDRIVER/1.5M/RCA)
希望小売価格:26,400円(税込)
R200,R100,ES60,ES55,ES50,ES20,ES15をご購入いただいた方
1. スピーカーケーブル:AudioQuest Q2 2mペア 裸線仕様
希望小売価格:8,928円(税込)
2. オーディオケーブル(RCA):AudioQuest Tower 1.5mペア
※日本未発売 9,200円(税込)相当
▼詳しくはこちらのサイトをご参照ください
https://dm-importaudio.jp/news/detail/143.html
●Polk Signature Elite ES20 主要諸元
ツイーター:Terylene高音質ドームツイーター(1インチ x 1)
ミッドバス・ウーファー:ダイナミックバランス・マイカ強化ポリプロピレンドライバー
(6.5インチ x 1)
クロスオーバー周波数:2.4kHz
推奨アンプ出力:20 – 125W
感度:86dB
インピーダンス:4Ω
オーバーオール周波数特性:41Hz – 40kHz
外形寸法(WxHxD mm):216×375×354
質量(1台):7.7 kg
カラー:ブラウン / ブラック / ホワイト
希望小売価格: 57,200円(ペア・税込)
●Polk Reserve R500主要諸元
ツイーター:1インチ ピナクルリングラジエーター
ミッド/ウーファー:5-1/4インチ タービンコーン×2
オーバーオール周波数特性:32Hz – 50kHz
周波数特性(-3dB限界):49Hz – 38kHz
推奨アンプ出力:25 – 200W
感度(2.83V/1m):87dB
アンプ出力互換性最小インピーダンス:3.9Ω(4~8Ω出力のアンプに対応)
ツイーター/ミッドレンジ:2500Hz
外形寸法(WxHxD mm):255.4×1044.5×348.8
質量(1台):17.7 kg
ミッドバス/ウーファーエンクロージャータイプ:背面ETFポート
カラー:ブラウン / ブラック / ホワイト
足:スパイクおよびゴム足
スピーカー端子:シングルニッケルメッキ 5ウェイ
希望小売価格: 154,000円(ペア・税込)