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カマシ・ワシントン 祝祭感あふれるLAからの人類愛アンセム


Photo:cherry chill will

まさに神降臨。楽しさとド迫力の大円団。白いガウンの宇宙的なアフロ民族衣装を身に纏い,澱みなく咆哮する姿は今,最も脂が乗ったサックス奏者カマシ・ワシントンの真骨頂とでも呼ぶべきか。何という祝福空間,脳天をつくような爽快感。鍵盤のブランドン・コールマンとの掛け合い,マイルス・モーズリー(b)とトニー・オースティン(ds)のリズム隊の復活,LAコミュニティーの最強の布陣が揃った,このジャムバンドの楽しさといったら,もはや尋常ではない。5曲のみ70分の濃密なライブは,アンコール一切なしにもかかわらずインティメイトな一体感に満ち,観客たちも終始大盛り上がり。間違いなく2025年度前半ベスト・ライブのひとつであった。
最初の曲は最新作で異色作『フィアレス・ムーブメント』から➀。実父リッキー・ワシントンのトライバルなフルートの音色が会場を包み込み,突如として8人編成による大演奏に突入する。冒頭からバリバリ吹きまくり,飛ばしまくるカマシは,まるでスペース・カウボーイのよう。途中キーボードにも触れ,哀愁を帯びた大袈裟なほどドラマチックな一大アンソロジーからライブは幕を開けた。次の曲は当時2歳だった愛娘がピアノで弾いたラインからインスパイアされたという➁。簡単なメロディーから展開される壮大なエピックソングに魂が吹っ飛ぶ。ウェストコーストサウンドのパイオニアの一人でレジェンドのDJバトルキャットによる煽りも心憎い。そんな流れの中に,ある種,歌謡曲のような感動的なアンセム➂が目まぐるしく蠢き,虫の音,鳥の鳴き声も。マイルスの雄弁なアルコ,トニーのドラムソロも凄まじい。そして,今回の最大のみどころでもある➃。渡辺信一郎監督による新アニメ・シリーズ『LAZARUS ラザロ』のために書き下ろされたスペーシーなバラード曲。紅一点のパトリス・クインのヴォーカルがフィーチャーされ,自然回帰的なテーマが印象的で美しい。ラストは同アニメから➄。カマシがカマシたる所以ともいえる楽しさとスリリングな物語性に満ちた,締めにふさわしい楽曲。人類愛を感じさせる温かさ,真摯な人間性,何よりも本人たちが,その瞬間を最大限に楽しんでいるのがわかって素晴らしかった。ステージが終わり,照明がついた際に,ドン・ウォズ(ブルーノートの社長)を観客の中に見かけたのだが,きっと御大も,このステージの出来栄えに満足していたに違いない。(落合真理)

カマシ・ワシントン 東京都・六本木「ビルボードライブ東京」
5月23日(金)

■Setlist
1st
1. Lesanu
2. Asha The First
3. Prologue
4. Sageness
5. Vortex

Personnel カマシ・ワシントン(ts,key),パトリス・クイン(vo),リッキー・ワシントン(fl,ss),ライアン・ポーター(tb),ブランドン・コールマン(key),マイルス・モーズリー(b),トニー・オースティン(ds),DJバトルキャット(DJ)