柳原由佳がフランス・シャモニーで録音した初の完全即興ピアノソロアルバム『sonvisibilité』アルプスを飛ぶ黄嘴烏の奇跡のジャケット写真が象徴する柳原の力強さと世界への飛躍
- 2025年08月18日
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インタビュー/文:神野秀雄
大阪出身でバークリー音楽大学に学び,東京・関西の2拠点で20以上のプロジェクトで幅広く活動,世界へ活躍の場を拡げる柳原由佳が初の完全即興ソロアルバム『sonvisibilité』(ソヴィジビリテ)をリリース。柳原撮影による奇跡のジャケット写真にまず圧倒される。モンブラン山系3,800mの雪山を飛ぶ黄嘴烏(キバシガラス)と輝く太陽。
「タイトルはフランス語からの造語で”可視性”。自分の見える視界と音の視界,その見通しの未来性や可能性という意味を込めました」(柳原 以下同)
録音は2023年4月シャモニーのLa Maison des Artistesで行われた。当時ヨーロッパ録音を模索中で,会場が録音スタジオも併設することを知り渡仏を決意。
雨の4月13日,晴れた14日に完全即興で58トラックを録音。厳選した16曲は録音の時系列を活かし<A Cold Rainy Day><夕刻>など自然と光を意識したタイトルに。完全即興ながら曲としての構成美を持つものも多い
「調性(トーナリティ)を意識せず出てくる音を紡いでいった結果,調性のあるソロ作品になりました」
なおキース・ジャレットとの接点では『Dark Intervals』の影響を挙げた。音の仕上げではアンビエント的にしたいという本作プロデューサーの松井吉光とピアノ本来の明瞭で力強い音にしたい柳原の意見の相違もあったが,柳原が信頼するエンジニア伊藤英彦により柳原寄りで完成した。
柳原は大阪府内の神社に捧務する神職という顔も持ち,メシアンは教会の即興オルガン奏者という顔も持ち,自然や光と向き合う音楽・宗教観でジャケットを軸に繋がりを感じる。今後は「海外との行き来を考えています。ソロも増やしたい。自分の音楽観を共有したいと思う気持ちと共に共感してくださる方に出会いたい。さらにはその視点を広げてくれる様な音楽家ともっと出会いたいと思っています」。同年9月には故・古谷光広率いるKHAMSINでデトロイト・ジャズ・フェスティヴァルに出演,異例の集客とスタンディングオベーションで迎えられ柳原の実力が北米でも正当に評価された。その後柳原は台湾,韓国,シンガポールへも進出。柳原の世界への扉を開いた珠玉のソロアルバムに耳を傾けたい。
※この記事は本誌Vol.22 P84TOPICSの記事を一部編集,抜粋して掲載しました
●柳原由佳 ピアノソロ ライヴスケジュール
8/31(日) 埼玉・蕨「Re. Delight」
9/19(金) 京都・祇園四条「Candy」
11/3(月・祝) 東京・吉祥寺「Strings」
▼公式HP
https://yukayanagihara.com/
『sonvisibilité』(Cantaloupe Lab)
▼本作の購入は柳原由佳 公式通販ウェブサイト,またはCantaloupe Labウエブサイトにて
https://yukapiano.base.shop/