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KAZUKI KATSUTA Then 勝田一樹が導くネクストレベルのサックス・インスト新世界

ディメンションのサックス奏者,勝田一樹がソロアルバム『Then』をリリースした。昨年の『Neo』に続く5作目の本作は,前作と同じくキーボーディストの友田ジュンと二人で制作され,前作をさらに進化させた意欲作だ。さらに,ディスク2には全曲を繋げたノンストップ・バージョンを収録。新たな音の世界を切り開く勝田一樹に,制作の裏側と今後の展望についてじっくりと話を聞いた。

インタビュー/文:村井康司
撮影協力:Cafe Cotton Club高田馬場

斬新なアプローチで生み出された『Then』

DIMENSIONのサックス奏者勝田一樹が,昨年の『Neo』に続く5作目のソロ作『Then』をリリースした。『Neo』と同じく友田ジュンと二人だけですべてのレコーディングを行ったアルバムで,ディスク2にはディスク1の全9曲をエディットして繋げた「『Then』No Limit Version」が収録されている。レコーディングの詳細とこれからの展望について話を伺った。


−−−『Then』は,昨年の『Neo』をさらにパワーアップしたサウンドだな,と思って聴いたのですが,ご本人としてはどう感じていますか?

勝田一樹「マイルスの4部作じゃないですけど,こうしたサウンドの第二弾みたいな流れで作りました。管楽器が主役で音楽を作ると,フュージョン的なサウンドになることが多くて,僕はフュージョンも好きなんですが,ソロ3作目まではフュージョン的なものをやったので,毛色を変えたいと思って『Neo』を作ったんです。それがうまくいったので,その進化版みたいな感じで,ということですね」

−−−今回も友田ジュンさんと二人だけで制作していますが,そういうコンセプトで?

「いや,特にコンセプトというわけではないです。他のミュージシャンを入れてもいいんですけど,結果として入れる隙間がない,必要がないと判断したわけです」

−−−今回,『Neo』に比べて勝田さんのサックスがより際立って聞こえるような印象がありますが,そのあたりは意識されましたか?

「あ,そうですか。(アルト・サックスの)楽器を変えたので,そのせいもあるかもしれませんね。今までは60年代の古いモデルを使っていたんですが,最新のモデルにしたんですよ。どっちもセルマーですが,古いモデルは金属疲労もあって枯れた音がするんです。そこが味になるわけですけど。新しいモデルの方が音は大きいです。とは言っても,吹いているうちに僕の音になるわけですが」

−−−以前もおっしゃっていましたけど,アルトの音はほとんど加工していないんですね。

「そうですね,ほぼ録りっぱなしです。ミックスの段階でちょっと加工することはありますけど,コンプをかけるとか,その程度で,エフェクターを使ったりはしていません。よく言われるんですよ,”どんなエフェクターを使ってああいう音を作っているんですか?”って」


−−−それまでのアルト・サックスになかった音色だ,ということですよね。サックスと言えば,今回はアルトだけでなくバリトンやソプラノも使ってらっしゃいますね。


「今まではアルト一本でっていうのが僕のやり方でしたけど,楽器も新しくしましたんで,せっかくだからバリトンも買ってみようかなと。バリトンはあまり使わないので持っていなかったんですよ。で,買ったから,バリエーションのためにちょっと使ってみようかな,とね」

−−−なるほど。バリトンのリフから始まる曲もありますよね。


「ええ,バリトンはリフだけで使っています。バリトンでソロも吹いてみたんですけど,結局それはやめました」


−−−サックスは結構何度もダビングしてるのかな,と思うんですけど。


「してます。メロディーに関しては主メロにダブってオクターブ下を入れたりとか,場合によってはオクターブ上もフラジオで入れてたりするんで。だから,それで3トラックで,それをダブってもう一度同じことをやって6トラックになっちゃってるケースもありますね。で,それに対してのハーモニー・パートも同じような仕組みで,都合12トラックっていうのもありますね」

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『Then』(ZAIN RECORDS)