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ジャズ喫茶巡礼「田舎でジャズ喫茶【東京ローカル編】」其の十六 Café & Bar Panja(東京都世田谷区)


※南欧のテイストが感じられるインテリアは世田谷区の飲食店を多く手がけるデザイナーによるもの。飲食サービスにもこだわって、生麺を使ったパスタや完全手作りのスパイスカレー、マスターの奥様手作りのスコーン、ケーキ、プリンなどのスイーツを楽しむための空間を演出

写真/文:楠瀬克昌

今回は東京のジャズ喫茶が登場という当連載初めての展開。大都会の東京でも,新宿や渋谷のような繁華街のジャズ喫茶と,いわば「東京ローカル」のジャズ喫茶では出店条件も客層もまったく違う。後者はむしろ「田舎のジャズ喫茶」に近いといえるだろう。そして,これから東京で新しくジャズ喫茶を開くとなると,昨今の物価や家賃の高騰などを考えるとどうしても「東京の田舎で」というケースが多くなる。東京でも有数の高級住宅街を擁するハイソなエリア,世田谷区を「田舎」と呼ぶのは失礼かもしれないが,2023年に世田谷区砧(きぬた)に開業した「Panja(パンジャ)」は,こんな時代における「東京ローカルジャズ喫茶」のひとつだ。
戦前から東京のジャズ喫茶の多くは繁華街にあり,世田谷区のような静かな住宅街中心のエリアでは珍しい存在だった。「おそらく当店は砧で最初のジャズ喫茶ではないでしょうか」と店主の小早川義則さん(61歳)。
岩手県一関市出身で大学予備校に通うために上京して以来,東京での生活を長く続けてきた小早川さんだが,会社員をやめて世田谷で暮らすようになったのはこの「パンジャ」のオープンがきっかけだった。
「中央線沿線なども探してみたのですが条件に合うものがなくて,情報サイトでたまたまヒットしたのがこの物件でした。砧のことはまったく知らなかったのですが,いいところだなと感じたんです。店を始めてみると,地縁が深いエリアだとわかりました。このあたりで成功している飲食店経営者の多くは,代々この土地で生まれ育って暮らしている人たち。夜のバータイムのお客さんは地元の人ばかりで,顔なじみ同士の話題に当初はついていけませんでした。また〈ジャズ喫茶〉という業態そのものに戸惑われる方も多かったです」。
想像以上のアウェイな状態でジャズ喫茶を始めた小早川さんだが,少しずつ日常的にこの店を利用してくれるお客さんも増えてきている。それは小早川さんと同じように他所から移り住んできた人や,自分の居場所としての居心地のよさを感じている人たちだ。

【機材】
スピーカー:エンクロージャーJBL4560,ウーファーJBL2220B,ドライバーJBL2441,スピーカーホーンJBL2395,ツイーターJBL2405
プレーヤー1:DENON DP-80(撮影時はDP-3000),アームAudio Craft AC3000,カートリッジShureV15 TypeⅢ,キャビネット:レジナミックサウンド,フォノイコライザー合研LAB GK08MV
プレーヤー2:DENON DP-75,アーム:Audio Craft AC300,カートリッジDENON DL-102(昇圧トランスは無し),フォノイコライザーSunvalleySV-6
プリアンプ:Allen&Heath X one62(DJミキサーで代用)
パワーアンプ:Thomann S-75 x3台(マルチアンプ駆動)   
チャンネルデバイダー:DBX234XS

Café & Bar Panja(パンジャ)

東京都世田谷区砧5-1-1 ベルビュー成城2F
営業時間 水-土12:00-22:00(金のみ23時まで),日12:00-17:00
定休日 月,火 
電話番号 03-6362-3338

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