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Jazz Scene 2023-2024:World 2024年 新たなルネッサンスの幕開け

コロナ禍の静寂を打ち破り ジャズの魂が再び躍動する

2023年ジャズ・シーンの躍進と復活劇は,まさに21世紀のルネッサンスの到来を予感させるものであった。ウェイン・ショーターの逝去やエスペランサ・スポルディングとの最期の邂逅,エメット・コーエンの革新的なストリーミング活動,Z世代アーティストの健闘―そのすべてがジャズ復活の兆しであり,芽吹いた才能は今も躍動し続けている。2024年,ジャズの魂は再び息を吹き返し,新たな歴史が花開こうとしている。

文/写真:常盤武彦

JAZZ SCENE
左から,ウェイン・ショーター(ts/ss) ,サマラ・ジョイ(vo),エスペランサ・スポルディング(vo),クリスチャン・マクブライド(b) photo by Takehiko Tokiwa

21世紀のルネッサンスの到来を,予感させるジャズ・シーン。

コロナ・パンデミック下の2020年に,キューバ出身のピアニスト,ファビアン・アルマザンにインタビューを行った。彼は妻のリンダ・メイ・ハン・オー(b,el-b,vo)の初めての出産を控え,そのファミリーが暮らすオーストラリアに待避中だった。「中世ヨーロッパでペストが大流行した後,ルネッサンスが始まり,あらゆる芸術分野の大爆発が起きた。コロナ・パンデミック後の世界も,芸術が復活し隆盛を誇るようになってほしいし,そうしなければいけないと思う」とファビアンは力強く語った。アメリカとヨーロッパのジャズ・シーンは,2022年にはほぼ完全に復活し,すでに2年が過ぎる。日本も2023年には来日するミュージシャンが,コロナ前のペースに戻る。世界のオーディエンスは,ライヴ・ミュージックの素晴らしさと価値,かけがえのなさを改めて認識した。
 
2023年3月2日のウェイン・ショーター(ts,ss)逝去(コロナ罹患ではない)のニュースには,大きな衝撃を受けた。1980年代初めにその音楽に出逢い,本人への取材のチャンスも1997年に巡ってきて,その死まで幾度となく撮影をし,いつもその音楽に衝撃を受けてきた。最後に撮影したのは2017年のデトロイト・ジャズ・フェスティヴァル。その時の模様は,現時点では最後のリーダー作『Live at The Detroit Jazz Festival』に遺されている。テリ・リン・キャリントン(ds),エスペランサ・スポルディング(b,vo),レオ・ジェノベーゼ(p,key)に,本来なら同年6月に亡くなったジェリ・アレン(p)が参加する予定のスペシャル・クィンテットでの作品だ。新たな共演者に刺激されたウェインの創造力が,彼の旧作に新たな命を吹き込んだ。