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Makoto Ozone Trinfinity 小曽根真とニュー・トリオが織りなす至福の饗宴 音楽の精髄が煌めく傑作の誕生

小曽根真の音楽的探求が実を結んだ傑作『Trinfinity』がついにリリースされた。自身が主催する次世代プロジェクト「From OZONE till Dawn」から,ベース小川晋平とドラム きたいくにとをフィーチャー。ニュー・トリオが放つエネルギーと無限の音楽性は,彼らが創造する音を拡張し,共鳴させる。ニューヨークでの録音にはパキート・デリベラやダニー・マッキャスリンのスペシャルゲスト,そして新世代サックス奏者・佐々木梨子やNYで活躍するパーカッショニスト二階堂貴文が参加し,作品に多面的な彩りを添えている。小曽根本人に「Trio」と「Infinity」を掛け合わせた『Trinfinity』の,果てなき探究心と無限性について語ってもらった。

インタビュー/文:伊藤嘉章

小曽根
左から,きたいくにと(ds),小曽根真(p),小川晋平(b) Photo by Takumi Saitoh

trinfinity
『Trinfinity』(Verve)

僕も含めてここから3人で成長していける
っていうことがバンドをつくる一番の意味

小曽根真の活動の多忙さ多様さは誰もが知るところだろう。昨年だけでもソロ,デュオ.トリオはもとよりビッグバンドではNo Name HorsesやドイツのWDRビッグバンドへの客演,NYフィル,LAフィル,フランス放送フィル,ワルシャワシンフォニー,N響,読響,新日本フィルなどのクラシックの交響楽団との多くの共演,演劇音楽への参加…など国内からNY,LA,ドイツ,中国…と縦横無尽の活躍だ。加えて神野三鈴とのFrom Ozone Till Dawnを通じ若手へのサポートも精力的だった。その中で特に印象深かったのは5月のブランフォード・マルサリス(sax)を加えたクリスチャン・マクブライド(b)とジェフ・ティン・ワッツ(ds)のトリオでの圧倒的な演奏だった。それでレギュラー・トリオでの音を聴きたいという思いを強め,昨年のTill Dawnでお披露目された小川晋平(b),きたいくにと(ds)によるアルバムを心待ちにしていた。そしてついに届いたのがニュー・トリオによる強烈な始動音が詰まった作品『Trinfinity』(トリンフィニティ)だ。
小川,きたいのあっと声を上げてしまうスピード感や呼応の見事さはその瑞々しさ以上に小曽根が創造する音を広げ増幅し「トリオ」として推進するエネルギーと音楽性の力に満ちたものだった。NYでの録音は独特の質感があり小曽根と親しいパキート・デリベラ(cl)やダニー・マッキャスリン(ts)のスペシャルゲスト,そしてバークリーに留学したばかりの驚きの新世代・佐々木梨子(as)やNYで活躍する二階堂貴文(per)の参加が作品の色彩をより豊かにしている。だが何にもましてこの作品が強い力を持つのは小曽根が今を感じ,今この時を形にしようとする強靭な意思がメンバーの感覚を鋭敏にし,曲に生命力を宿し,聴く者を揺さぶる事だろう。Till Dawnでのスタート以来多くの公演や新日フィルとの共演も含め緊密さを固めて来たトリオだがどのように録音に至ったのか。
「自分の中では(このトリオは)絶対楽しくなるって言う確信があって,演奏するたびに,それが実を結んでいきました。それでこれはもうこのメンバーでいこうって。スタート地点なので僕も含めてここから3人で成長していけるっていうことがバンドをつくる意味で一番。今から1年間自分たちが何を得てどういう風に変わるのかというのを試行錯誤し,ツアーもやっていきたい。僕が書いた曲であっても一緒にやっていくことで自分が新しくなる。今まで自分が書いた曲と違う曲がたくさん出てくる。それを演奏し,お互いを理解して深めていけるからツアーって大事なんですよね」