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Halie Loren Dreams Lost and Found ヘイリー・ロレンがフェイバリット・ソングスに込めた変わりゆく思い,新たな夢の創造

アラスカ出身のヴォーカリスト,ヘイリー・ロレンが,パンデミックを経て約6年ぶりのアルバム『ドリームズ・ロスト・アンド・ファウンド』をリリースする。今作では,彼女の代表曲や知られざるスタンダード曲,のカヴァーなど多彩な楽曲が収録され,自身の原点に立ち返る作品となっている。コロナ禍で内面的な変化を経験し,その過程を音楽に反映させたヘイリー。止まっていた時計の針が動き出し,再び音楽活動が可能になったことで,彼女は自らの使命に向き合い,新たな夢を追い求める。

インタビュー/文:落合真理

Halie Loren
ヘイリー・ロレン(vo)/Photo by Bob Williams

パンデミックを乗り越え,約6年ぶりのニューアルバム『ドリームズ・ロスト・アンド・ファウンド』をリリースするアラスカ出身のヴォーカリスト,ヘイリー・ロレン。とびきりジャジーでしかもポップ,両者の間を自在に行き来する彼女の最新作のテーマは“再生”,“つながり”,“希望”。自身の代表曲から知られざるスタンダード曲,<上を向いて歩こう>のカヴァーまで,全14曲が収録された本作は,ヘイリーが自らの原点に立ち返った作品だ(※日本盤にはボーナストラック2曲が収録されている)。アラスカの壮大な自然が育んだヘイリーのナチュラル&たおやかなヴォーカル,円熟味を増した表現力,現代シンガーソングライターとしての矜持,その全てが揃ったヘイリー・ロレンの集大成といえよう。

「このアルバムでは,内面的な変化に訴えかけるような曲を集めたの。パンデミックを経て私たちは皆,何らかの形で変わり,自身の異なった側面を見つけた。私たちが前進するため,将来に向けて持ち続けるべき新しい夢は,もう以前のものとは異なるかもしれない。今回の曲の多くは,そのような変化について歌っている」

フレッド・クーツとサム・ルイス作の<フォー・オール・ウィ・ノウ>(1934)は,本作の鍵であり,アルバムの核心を捉えた曲だ。

「この曲は私の心の奥深いところに響いた。私たちの人生,特にパンデミックで失ったものなど,私が辿ってきた精神状態を見事に表現していた。私たちにはコントロールできない貴重な瞬間が,どれだけ美しく神聖なものか,実感させられたわ。“何が起こるかわからない もう二度と会えないかもしれない だから今だけは この瞬間を心に残るものにしましょう”(筆者訳)という歌詞はとてもシンプルだけれど,私の心の特別な場所にいつもあるの」