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特集 ECMの音宇宙 アヴァンギャルドで聴くECMサウンド 寺島靖国が聴いた“次元が違う音”

自他共に認める熱烈なアヴァンギャルド・ファンである寺島靖国氏が,エソテリック本社試聴室に赴き,同ブランドの最新モデル「DUO SD」と対面,その実力をとことん試す機会がやってきた。試聴ソフトはこれも寺島さんが近年惚れ込んで止まないECMレーベルのピアノトリオ作品群。果たして「DUO SD」は,寺島さん果てることのない音へのこだわりを満たし,それを凌駕することができるのか。

文:寺島靖国

寺島靖国
寺島氏とavantgarde DUO SD/写真:高橋慎一

アヴァンギャルドはスピーカーの概念をとっくに超えている

これはひそかに思っていることだが,私はアヴァンギャルド・スピーカーの日本一のファンである。誰にも負けたくないし,負ける心算はない。
いや一度だけ部分的に敗北を喫したことがあった。
もう何度も書いているが,思い出すたびに口惜しくなるので何回でも文章化したいのである。
アヴァンギャルドの最高級機種「トリオ」が数十年前に発売された時のこと。「アヴァンギャルド合戦」が勃発した。
 北九州の後藤誠一氏,横須賀の三上剛志氏,共に医師であり,強力なオーディオ・マニアだが,このお二人,争うようにして最高機種Trio+6バスホーンを発注した。
負けじと私もトリオを注文しかけたが,なんと私の部屋には寸法的に入りきらないことが判明する。
泣く泣くその下の機種トリオ・サブ230を購入したのだった。
それから10数年。結果的に私はお二人に勝利したと考えている。御両人はその後,アヴァンギャルド・スピーカーを買う気配はない。彼らの最初で最後のアヴァンギャルドが未だにオーディオルームに鎮座している。
反して私は次から次へとさまざまな機種のアヴァンギャルドを購入した。
合計4機種。まずトリオのサブ230,続いてメッツォ,さらにウノ,そしてジャズ喫茶メグ用にデュオ。
ここまで惚れ込んだ理由はなにか。抽象的な言い方をすれば,要するに恋人なのである。仕事で疲れて帰ってもアヴァンギャルドが待っていてくれる。早く鳴らしてくれとウズウズする様子が伺える。