H ZETTRIO with YUCCO MILLER 音速で疾走するグルーヴと情熱の即興劇
- 2025年10月22日
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H ZETTRIOとYucco Millerによる2作目のコラボレーション・アルバム『Dazz On』がリリースされた。前作からわずか9か月で届けられた本作は,H ZETT Mが<自分に挑発していった>と語るように,より濃密でアグレッシブな内容に深化。この尋常でない熱量を持つグルーヴはどこから生み出されるのか? 楽曲制作の秘話や,お互いの魅力,即興が生み出す刺激的なコラボレーションについて,H ZETT Mとユッコ・ミラーが語り合った。
インタビュー/文:宗像明将
H ZETTRIOは,ジャズというものを超えて,私の中ではすべてが完璧なんです(ユッコ・ミラー)
H ZETTRIOとYucco Millerによる2作目のコラボレーション・アルバム『Dazz On』がリリースされる。しかも,Yucco Miller feat. H ZETTRIO名義で発表された快作『LINK』からわずか9か月というスピードだ。両者の相性の良さはそのままに深化している。
2025年9月15日には<金沢ジャズストリート>で圧巻のライヴを見せたH ZETTRIOとYucco。『LINK』を経て『Dazz On』がいかにして生まれたのかを,H ZETT Mとユッコ・ミラーに聞いた。
−−− H ZETTRIO とここまで深く関わることができるYuccoは異例の存在だろう。お互いの魅力について聞くと,こう語る。
H ZETT M(以下HZM) 非常に攻撃的で,頼もしいなという感がありました。自分の好きなようにバリバリ吹いてもらうとかっこいい>(H ZETT M<以下HZM>)
ユッコ・ミラー(以下YM) H ZETTRIOは,ジャズというものを超えて,私の中ではすべてが完璧なんです。演奏していても,本当に私がやりたいことをすべて叶えてくれるんですよ
−− コラボレーションの2作目となる『Dazz On』は,制作方法は『LINK』と同じだというが,H ZETT Mは思索を巡らせていた。
HZM 1作目がああいうふうにできたので,2作目はどんなことができるかというのを,自分に挑発していった感じです。やっぱり1作目を踏まえてですから,濃くなったと思うんです
YM 『LINK』もめっちゃ好きなんですけど,今回は前回を上回るぐらいすごいと思って。ライヴも何度か一緒にさせていただいて,また新たにやりたいことがどんどん凝縮された一枚になったんじゃないかなと思います
−− 『Dazz On』の冒頭を飾る<Unbound>では,H ZETT Mのエレピが響き,そこにYuccoのサックスが泥臭さを感じさせるほどワイルドに響く。
YM 曲がめちゃくちゃかっこよくて,どんな風に吹こうかワクワクしました。でも,レコーディングではもう何も考えていないので
−− この日,H ZETT Mの手元にはノートが広げられていた。楽曲について制作後にメモを書き記したものだという。
HZM 解放,縛られない感覚,変化,展開,冒険的ナンバー,未来の空気感
−− <Chili Chili>のスウィング感も心地いい。
YM メロディーが決まっているところはあるんですけど,アドリブは何も決まってないので,自由にやっています
−− <Chili Chili>は,実は古い曲だという。ノートを見ながらH ZETT Mがこう語る。
HZM 『高校時のバンド,グルーヴ』って書いてあります。高校生の時作った曲なんです
−− <Continue>はYucco作曲。演奏の疾走感が強烈だ。
YM 絶対かっこよくアレンジされるので,別に私がどんな曲を作ってもいいんですよ(笑)。計画的に作ったわけではなく,お家にいるときに作ったメロディーをMさんに『こんな感じです』ってお渡ししただけなんです
−− ノートを見るH ZETT Mによると,ある人物との共演が楽器の選択に影響を与えているという。
HZM 『ファンキー,スピード感,ハモンドオルガン』。ハモンドオルガンは,去年,布袋(寅泰)さんのライヴで使ったので,その流れで鍵盤を購入しまして,それを使ったんです
−− Yucco作曲の<Alive>は,ジプシー音楽やアストル・ピアソラを意識したというが,そのイメージはH ZETTRIOに特に伝えていなかったという。それでいて,しっかりタンゴ風にアレンジされている。
HZM これはもうフレーズが行き先を示しているというか,『この曲はこういうほうに行きたいのかな』という解釈を広げていった感じです。『Yuccoさん,この曲は意外と冒険するなぁ』って思いました>(M)
YM アレンジが送られてきて,聴いたときに『おー!』ってなりました
−− H ZETT Mのノートにも,楽曲を的確に解釈するコメントが書かれていた。
HZM Yuccoさんフレーズの流れをそのままに,タンゴ的解釈,生命力や喜びを象徴するナンバー
−− <Terminal 7>は,H ZETT Mがアルバムで一番ジャズだと語る楽曲だ。
HZM 音の重なりがジャズ。<フリーダム・ジャズ・ダンス>という曲がありますけど,そのような曲ですね。ノートにも『ジャズ路線,緊張感のある対話に引き込む』って書いてありますね
YM 以前のタイトルが『FJD』で,これは『フリーダム・ジャズ・ダンス』だっていうのは私も実はわかっていました。テーマがすごく複雑でかっこいいメロディーで,それを意識してやったという感じですね
【ライブ情報】
●H ZETTRIO with YUCCO MILLER
2025.12.24(水) 大阪「CLUB QUATTRO」
2025.12.27(土) 東京「DANCE HALL新世紀」
●H ZETTRIO LIVE 2025 年末一本締めクリスマスSP
2025.12.19(金) 東京「渋谷区文化センター 大和田さくらホール」
●H ZETTRIO LIVE-Bring On 2026-
2026.1.5(月)/6(火) 「ブルーノート東京」
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『Dazz On』(apart.RECORDS)